
JR北海道が、札幌から旭川方面を結ぶ特急列車について、全車指定席とする方針を明らかにしました。函館・釧路方面の特急は、24年春に全車指定席化を実施済みなので、旭川方面の特急でも実施されれば、北海道内の在来線特急の全列車が全車指定席となり、自由席がなくなります。
JR北海道では、24年春の函館・釧路方面の全車指定席化に合わせて、駅で販売する紙の割引きっぷを廃止して、インターネットで販売する「トクだ値」に統一しました。トクだ値では、需要に応じて価格が変動するイールドマネジメントを導入しています。旭川方面の全車指定席化は、このイールドマネジメントシステム効果を最大化することが一つの目的です。
では、道内の特急列車は、これまでの指定席化とイールドマネジメントにより、収入増を実現したのでしょうか。JR北海道の収入概況をみてみると、24年4月~25年2月の実績で、特急列車が走る主要都市間3線区の利用者数は、前年比105%です。一方、主に特急列車の収入を示す中長距離収入は、前年比111%です。おおざっぱにいえば、特急の利用者数が5%増にとどまったのに対し、収入は11%も増えたわけです。「利用者増を上回る収入増」を実現しており、全車指定席化とイールドマネジメントは、成果を上げていることがみてとれます。
交通機関におけるイールドマネジメントは、飛行機や高速バスでは広く導入されています。しかし、鉄道ではまだ緒に就いたばかり。それでも、成果が出てきた以上、今後はもっと広まっていくでしょう。その前提となるきっぷのネット販売も、徐々に浸透してきています。
利用者にとっては、閑散期は安く利用できますが、通常期や繁忙期では実質値上げとなります。そのため、高速バスなど、他の交通機関の利用を検討したくなるでしょう。しかし、高速バスでも、運転士不足を背景に値上げが相次いでいますし、減便で利用しづらくなっている路線も増えています。となると、鉄道が実質値上げされたとしても、利用者は、ある程度、受け入れるほかなさそうです。
特急列車の自由席は、安いだけでなく、ひょいと乗れる便利さが魅力ですが、それもなくなります。利用者にとっては厳しい話になりますが、早めにきっぷを申し込むなど、計画的に行動することが重要になりそうです。
(旅行総合研究所タビリス代表)
(観光経済新聞2025年4月14日号掲載コラム)