京都観光に便利な切符といえば、市バスの1日券です。600円で運賃均一区間が乗り放題。便利で手頃な旅行者の強い味方です。
この1日券、2018年に500円から600円に値上げされたばかりですが、10月に再び値上げされ700円になります。地下鉄にも乗れる地下鉄・バス1日券は、900円が1100円になります。
値上げの背景には、京都市交通局の危機的な経営状況があります。昨年12月に発表されたレポートによりますと、新型コロナの影響もあり、京都市バスは年52億円の赤字となっていて、このままの状況が続けば、運賃改定や路線・ダイヤの大幅な見直しの検討が必要になるとしています。
京都市バスの均一運賃は230円と高めです。しかも混んでいるのに、なぜ大赤字なのでしょうか。実は、1人あたりの乗車運賃は153円と低く、割引運賃で乗車している人が多いためだそうです。
1日券を値上げするのは、1人あたりの乗車運賃を高くする目的があるわけです。1日券の利用者は観光客が多いので、値上げしても市内の有権者の負担増は避けられる、という思惑もあるようです。
新型コロナが流行する前は、インバウンドもあって特に観光路線の市バスが大混雑し、市民が乗車しづらいという状況になっていました。そのため、観光客に負担を求めようという趣旨は理解できます。
全国の都市バスの1日乗車券と比べると、東京、大阪が500円、横浜が600円、名古屋が620円、札幌が750円、福岡が900円などとなっています。市内の鉄道網が発達している都市は安めで、バスが市内移動の主役の都市は高めです。そういう視点で見ると、京都市バス1日券は700円に値上げしても、適正価格の範囲内といえます。
ただ、京都のハイシーズンの異様な混雑を見ると、観光客をできるだけ地下鉄に誘導したほうがいいようにも感じられます。ならば、バス1日券を廃止し、地下鉄・バス1日券のみにして、900円に据え置くという考え方もありそうです。
旅行者の心理としても、低価格のバス1日券があるから買ってしまい、買った以上はバス利用にこだわってしまうものです。地下鉄・バス1日券しか存在しなければ、地下鉄を組み合わせて移動するようになるでしょう。そのほうが効率的に観光できますので、結局は、旅行者の利益にもなるのではないでしょうか。
(旅行総合研究所タビリス代表)