中国・ラオス鉄道が12月3日に開通しました。政治的にはいろいろな意見がありますが、旅行者の移動手段としてみれば利用価値がありそうな路線です。中国から東南アジアまで、鉄道を乗り継いで旅行できるようになるからです。
日本を起点に考えると、大阪・神戸から船で上海に渡り、鉄道で昆明、ビエンチャン、バンコクへと乗り継げそうです。その気になれば、さらにクアラルンプールを経てシンガポールまで鉄道旅行が可能です。
かつて、日本から東南アジアへ飛行機を使わずに旅行するのは至難の業でした。そうした時代を思い返すと、上海からシンガポールまで鉄道を乗り継げるとは、まさに隔世の感です。
列車の所要時間は、昆明からビエンチャンが約10時間と発表されています。上海から昆明へは約11時間。ビエンチャン(ターナレーン)からタイのノンカーイまで15分。ノンカーイからバンコクまで約10時間。計算上は、上海から32時間程度の乗車でバンコクに着けます。
上海―バンコクの直通列車が走るわけではないので、実際に32時間で行けるという話ではありません。それでも、かつて走っていた寝台特急「トワイライトエクスプレス」の大阪―札幌間が約22時間だったことを考えると、上海―バンコクの鉄道の乗車時間が約32時間という短さには驚かされます。
バンコクでは、これまで中央駅とされてきたフアランポーン駅がまもなく廃止されます。東南アジア最大の鉄道ターミナルとして知られ、日本人旅行者にも愛されてきましたが、列車本数が増えるにつれ手狭になり、機能を郊外のバンスー中央駅に移設することになったのです。完全廃止はまだ先ですが、2021年12月22日をもって長距離列車の発着が終了します。
バンコクから先、マレー半島縦断鉄道の終点だったシンガポールのタンジョンパガー駅も2011年に廃止され、機能は郊外のウッドランズ駅に移されています。フアランポーン駅もタンジョンパガー駅も20世紀前半に造られた重厚な駅舎を備えた終着駅らしいターミナルでした。廃止は残念ですが、それだけ鉄道整備が進んできた証でしょう。
それにしても、近年のアジアの鉄道の進化には目を見張るものがあります。振り返って日本では、半世紀前に立てられた整備新幹線計画すら未完成です。建設速度をもう少し上げられないものでしょうか。
(旅行総合研究所タビリス代表)