黒部峡谷鉄道は、切り立った峡谷に沿って走るトロッコ列車で有名です。終点は欅平ですが、作業用の輸送路はさらに奥の黒部川第四発電所を経て、黒部ダムまで伸びています。これを「黒部ルート」といいます。
管理しているのは関西電力で、定期的に無料見学会を開催し、一般人を受け入れてきました。この2年はコロナで休んでいましたが、今年は3年ぶりに開催されるそうです。
筆者も参加したことがあります。宇奈月から黒部峡谷鉄道に乗って1時間20分。終点の欅平にて集合後、もう一度トロッコ列車に乗せてもらいます。留置線の奥で降りて、エレベータで上部軌道と呼ばれるトロッコ列車の地下駅に移動。「高熱隧道」で名高い地温の高い区間を通るため、開放式のトロッコではなく、がっちりとした車体に身を縮めて乗車します。
地下区間を6キロほど揺られて黒部川第四発電所に到着。壮大な施設を見学後、インクラインという無骨な地下ケーブルカーで標高を稼ぎ、最後はトンネル内のバスに乗ります。終点の黒部ダムまでは、見学時間も含めて約5時間。地上に出てダムのほとりに立つと、太陽がとてもまぶしく感じられました。
さまざまな乗り物で峡谷をさかのぼっていく体験ができるのは、世界的に見ても珍しいでしょう。その点で、観光的な価値はきわめて高いルートと実感しました。大げさでなく、スイスの登山鉄道にも負けない魅力があります。
この黒部ルートが、2024年度から「一般開放・旅行商品化」されます。見学会を旅行商品に組み入れて販売する形です。これほど壮大な観光ルートが国内ツアーとして新たに開発されるのは近年珍しく、高い注目を集めそうです。
どのような旅行商品になるのかは未定ですが、宇奈月から黒部ダムに着いた後、さらに大観峰や室堂を経由して立山に抜けるような、ダイナミックなルートが設定されるに違いありません。
受け入れ人数は年間最大1万人と限られますが、日本人向けはもちろん、インバウンド向け商品としても高い訴求力を持つでしょう。2024年春には北陸新幹線が敦賀まで開業しますので、あわせて北陸観光を盛り上げる起爆剤として期待されます。
入れ替わる形で、見学会は、終了となります。こちらも「最後の無料見学会」として、人気を博しそうです。
(旅行総合研究所タビリス代表)