20年くらい前、初めて東海道新幹線のグリーン車に乗ったときのこと。ひどく疲れていて、足を伸ばして寝ていこう、と奮発しました。ところが、いざ乗ってみると、足元が思ったより狭く、ゆっくり眠るにはリクライニングの傾きも足りません。それまで、東海道新幹線のグリーン車には豪華なイメージを抱いていましたが、乗ってみるとそれほどでもないな、と拍子抜けした記憶があります。
私のような庶民がたまに乗るぶんには、十分ぜいたくな座席です。しかし、東海道新幹線は日本を代表する列車ですから、グリーン車に物足りなさを感じている方も少なくないでしょう。
そうした声はJR東海にも届いていたようで、同社は新たな経営強化策として「上級グリーン車」を検討すると発表しました。
詳細は明らかでありませんが、真っ先に思い浮かぶのは、JR東日本が開発したグランクラスです。しかし、JR東海がその名称を用いずに、「上級グリーン車」と呼ぶのには、理由があるのでしょう。
グランクラスは飛行機のファーストクラスに匹敵するサービスという触れ込みで導入されました。しかし、国内線でファーストクラスを利用する客層が限られているからか、最近はサービスを縮小するなど、苦戦が伝えられています。
こうした状況を踏まえたからか、東海道新幹線の上級グリーン車は、従来のグリーン車の延長線上に位置づけられているようです。グリーン車という名称を残すことで、企業の出張規程の範囲内で利用しやすくする狙いもあるのでしょう。飛行機の上級顧客を奪うより、既存の利用者に高付加価値サービスを提供することで、増収を実現しようという試みに感じられます。
そう推理していくと、東海道新幹線の上級グリーン車は、グランクラスほどの高級指向にはならなさそうです。1人あたりの占有面積を少し増やし、ゆったりしたシートを提供するところまででしょうか。
めったに使わなさそうな筆者が図々しく希望を述べれば、シートピッチはできるだけ広くしてほしいですし、リクライニング角度も大きくしてほしいところ。パソコンを隣席からのぞき込まれないように、パーテーションの導入や独立シートも望まれます。
できれば個室があると、VIPもファミリーも使いやすそうです。ただ、列車の個室は全般に稼働率が良くないようですから、難しいかもしれません。
(旅行総合研究所タビリス代表)