京都観光の強い味方は「バス1日券」です。京都市内を縦横無尽に駆け回る市バスに乗り放題で、1日700円。少し前までは600円でした。
普通運賃(均一区間)は230円なので、4回乗れば元が取れる計算です。京都はバス路線網が発達していて、便数も多いので、どこへ行くにもバスが便利。1日観光すれば、4回どころか7、8回乗ることもあるので、元を取るのは簡単です。
この素敵なチケットが、ついに廃止されるようです。京都市交通局はバス1日券を23年9月末で販売終了する方針であることが明らかになりました。1日1100円の「地下鉄・バス1日券」は残して、観光客の地下鉄利用を促すそうです。
背景として、市バスの混雑があります。とくに観光路線の混雑はひどく、筆者の経験でも、コロナ前の東山方面の路線などは、いつ乗っても混んでいて、積み残しが多いイメージがあります。混雑の一因が、バス1日券にあることは想像に難くありません。
バス1日券がなくなり、地下鉄・バス1日券だけになるなら、観光客は地下鉄をこれまでより多く使うようになるでしょう。その意味で、バスの混雑緩和にバス1日券の廃止が効果的なのは理解できます。また、赤字に悩む京都市交通局の経営改善にも役立つでしょう。実際、廃止により、約3億円の増収を見込んでいるそうです。
ただ、旅行者の視点で見ると、京都の地下鉄は微妙に不便です。繁華街の河原町や祇園に路線が通っておらず、清水寺や金閣寺、銀閣寺、伏見稲荷神社、嵐山といった人気観光地へのアクセスにも使えません。「1日券」で乗車できる鉄道路線に、阪急や京阪、嵐電の市内区間が含まれていればもっと便利なのに、と思ったことがあるのは、筆者だけではないでしょう。
そういうチケットが過去になかったわけではありません。「歩くまち・京都レールきっぷ」というフリーきっぷが期間限定で何度か発売されています。京都市営地下鉄のほか、JR西日本、阪急、京阪、嵐電の市内路線が乗り放題で、21年に発売された際は、1日券1300円、2日券2千円でした。
通年発売されれば、観光客にはとても便利で、バスの混雑緩和にも役立つでしょう。バス1日券の廃止を契機に検討してほしいところです。
(旅行総合研究所タビリス代表)