JR北海道の根室線・富良野―新得間が、2024年4月1日に廃止されると正式に決まりました。廃止区間のうち、東鹿越―新得間は2016年の台風10号で被災し、代行バスでの運行が続いています。現在、列車が運行中の区間としては、富良野―東鹿越間が廃止対象です。
昨年夏に富良野から乗車したとき、キハ40形という古い気動車が1両だけでした。平日の昼下がりで、乗客は10数名。廃止候補の路線としては多いですが、ほとんどが鉄道ファンとおぼしき旅行者で、地元客は数人のみ。地域輸送の役割が小さくなっている様子もうかがえました。
富良野を出発した列車は、エンジンのうなり声を上げながら、富良野盆地をゆっくりと南下していきます。かつては長大編成の列車が運行する幹線区間だったため、どの駅も構内は広く、長い行き違い線を備えます。特急が往来していた時代の隆盛を感じさせますが、いま、長いホームに降りる客はわずかです。
実質的に現在の終着駅となっている東鹿越は、近くに鉱山があるだけの無人駅です。駅前に停まっていた代行バスは新型の観光バス車両で、乗り換えると空調がきっちりしていて、座席もリクライニング。JRの古い気動車よりも明らかに快適です。
並行する国道は広く、渋滞もありません。代行バスは狩勝峠を越えて、途中、鉄道駅から離れているサホロリゾートに立ち寄ります。バスはルート設定が自在だからできる芸当で、利用者目線でみれば、過疎地の交通手段として、バスが鉄道より優れていることを実感します。
富良野―新得間が廃止されれば、明治以来の鉄道の大動脈だった「根室本線」が分断されることになります。ノスタルジーとしては残念ですが、現実としてみると、やむを得ない廃止判断と感じられます。
これで、JR北海道が16年に「単独で維持するのが困難な線区」として提示した線区のうち、特に利用者が少ない輸送密度200人未満の5区間が全て廃止されます。JR北海道は、それ以外の線区については廃止方針を示しておらず、現時点では、沿線自治体の支援を得ながら存続する方針のようです。
JR北海道において7年にわたり続いた「廃止議論」は手じまいにして、今後は、残された路線をいかに活用していくかの議論に軸足を移してほしいところです。
(旅行総合研究所タビリス代表)