西九州新幹線新大村駅は、長崎空港から約5キロの位置にあります。この間を結ぶ公共交通機関として、大村市が乗合タクシーの実証運行を行っています。
愛称は「おおむらかもめライナー」。長崎空港~新大村駅間が15分、運賃は500円です。当日30分前までネット予約可という利便性の高さが売り物で、飛行機と新幹線がタクシーを介して乗り換えられます。
5月下旬に利用してみました。羽田空港で飛行機に乗る前に予約すると、長崎空港のタクシー乗り場で運転手が出迎えてくれました。その便の利用者は筆者一人。使い勝手は通常のタクシーとほぼ同じで、新大村駅まで直通です。これで500円とは破格。タクシーなので荷物を運ぶ心配も要りませんし、大規模空港の「ターミナル間連絡バス」と大差ありません。
新大村駅から長崎駅までは、新幹線でわずか15分。惜しむらくは、西九州新幹線が毎時1本程度しか運行していないので、新大村駅に着いても、すぐ新幹線に乗れるとは限らないこと。筆者も30分くらい列車を待ちましたが、そのために、長崎駅に着く時刻はリムジンバスとほぼ同じになってしまいました。現状の運行本数では、乗合タクシーを使ってまで新幹線を選ぶ必要性は小さい、というのが実感です。
ただ、これは西九州新幹線の営業距離が短いからです。長距離を走る新幹線なら、新幹線の速度がモノをいいますので、空港と駅をリンクさせる価値は高まります。その点で注目は、24年春に開業予定の北陸新幹線小松駅でしょう。小松空港から約3キロメートルに位置し、空港にきわめて近い新幹線駅が誕生します。
小松空港と新幹線小松駅の間に、「ターミナル間連絡バス」のような頻繁運行の交通機関を用意すれば、新幹線と空港の結節が強まり、飛行機で到着した旅行者が新幹線に乗り継ぎやすくなります。北陸新幹線は長大路線で運転本数も比較的多いので、空港から北陸地方全体へのアクセスが改善するでしょう。
空港と高速鉄道をリンクさせる手法は、欧州ではよくみられます。パリのシャルル・ド・ゴール空港にはTGVが、アムステルダムのスキポール空港にはタリスが乗り入れています。
日本でも、空港に新幹線が直接乗り入れるのが理想です。それが直ちに難しいのであれば、新幹線駅に近い空港との結節を、より高めてほしいところです。
(旅行総合研究所タビリス代表)