バス路線の廃止が相次いでいます。原因の多くは運転手不足です。少し前までは、地方のローカル路線バスの廃止が目立ったのですが、最近は、大都市近郊の大手バス会社の路線まで廃止されています。
象徴的なのが、阪急バスです。11月5日をもって、大阪府と兵庫県の4路線が廃止されました。なかでも目を引いたのが、阪北線(梅田系統)です。阪急の一般路線バスとして唯一、梅田に乗り入れていた路線が廃止されたのです。
いうまでもなく、大阪・梅田は阪急電車のターミナル駅です。その梅田から、阪急の路線バスが姿を消したわけです。大阪市内の路線バスは大阪シティバス(旧大阪市バス)が主役で、阪急バスの存在感は薄かったのですが、それでも「梅田から阪急が消える」という衝撃は、やはり大きいと言わざるをえません。
廃止された阪北線は、阪急園田駅―梅田(阪急百貨店前)を結んでいました。廃止数日前に乗車してみましたが、平日日中時間帯でもそれなりに乗客はいて、延べ20人程度が入れ替わりながら利用していました。豊中市南西部から梅田に直行するには便利な路線で、廃止されたら困る人もいるに違いありません。ただ、最寄駅へ向かう他路線は残るので、電車へ乗り継げば「足」は確保されます。そうした事情もあって、梅田直通系統が廃止対象となってしまったのでしょう。
運転手不足が深刻化するなか、現時点では、大手バス会社は代替交通のある路線を中心に廃止していて、住民への影響を最小限にとどめようと配慮しています。しかし、運転手不足は解消の見通しが立っておらず、今後、代替交通がなくても廃止される路線が増えそうです。
廃止に至らないまでも、減便は各社で幅広く行われています。乗客がいて、混雑しているのに、十分な運行本数を保てなくなってきているわけです。
あまり人が乗っていないローカル路線バスの廃止については、これまでも数多くみてきましたし、やむを得ないと感じる部分がありました。しかし、乗客の多い路線バスの廃止は、次元の異なる問題です。
抜本的な対策は、運転手の待遇を上げて希望者を増やすしかなさそうです。すると運賃値上げか公金投入が避けられなくなってきます。それを利用者や有権者がどの程度受け入れられるのか。今後、避けられない議論になっていくのではないでしょうか。
(旅行総合研究所タビリス代表)