【テツ旅、バス旅 76】競合から分担へ 鎌倉 淳


 長野市と松本市を結ぶ高速バスが来年3月末で廃止されます。すでに土休日の運行はなくなっていて、平日に10往復が運行しているだけでしたが、長野県の二大都市を結ぶ高速バス路線の廃止は、驚きをもって受け止められました。

 理由は例によって運転手不足です。長野―松本間はJR在来線特急「しなの」と競合していて、高速バスを廃止しても代替交通が確保されているという判断もあったようです。

 似たような例は岡山県にもあり、岡山―津山間の都市間バスが10月31日をもって廃止されています。こちらも県都と県内の主要都市を結ぶ路線で、JR津山線と競合していました。

 深刻なドライバー不足により、バス路線の廃止や減便が相次いでいます。バス会社は、鉄道など代替交通のある区間から優先的に撤退し、バス以外に公共交通のないエリアの輸送を維持しようとしています。

 長野や岡山の事例は、こうした動きが、一般路線バスだけでなく、高速バスにも波及していることを示しています。

 全国に高速道路網が整備されて以来、高速バスは常に鉄道のライバルで、JRから乗客を奪ってきました。とくに在来線特急は高速バスとの速度差が小さい一方、運賃水準がバスより高いので、鉄道からバスへ旅客の流出が続いてきました。しかし、その動きに転機が訪れたわけです。大げさに言えば、歴史的な転換点といえます。

 バス会社からみれば、高速バスはドル箱であることが多く、できることなら廃止は避けたいところでしょう。実際、いまのところ、廃止されているのは乗車率の芳しくない路線が中心で、長野―松本線や岡山―津山線もその例にもれないようです。

 とはいえ、運転手不足解消の見通しが立たない以上、今後は、乗車率の高いドル箱路線でも減便や廃止が避けられなくなるでしょう。すでに、各地の高速バスの基幹路線で、減便のニュースが報じられはじめています。その受け皿となるのがJR特急です。つまり、高速バスとJR特急は、競合から分担の時代に入りつつあるといえます。

 鉄道とバスが連携する動きは、一部路線で始まっています。たとえば徳島県南部では、JRとバス会社で共同経営が行われています。これはローカル線の話ですが、今後は特急や高速バスのあいだでも、連携したサービスが求められていくのではないでしょうか。

 (旅行総合研究所タビリス代表) 

 
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