上野東京ラインは、赤羽駅を出発すると、次は浦和駅まで停まりません。ところが、十数年後に停車駅が一つ増えそうです。川口駅でホームを増設する方向になったからです。
現在、川口駅に停まるのは京浜東北線だけ。ラッシュ時にはホームが非常に混雑しています。状況を改善するため、川口市ではJRに対し、上野東京ラインなど中距離電車の停車を長年求めてきました。それがようやく受け入れられたわけです。
駅西口に市有地を確保していますので、ホーム用地の問題はありません。古くなった駅舎も建て替えます。総工費は400億円に達するようで、費用の大半を市が負担します。
川口市は、市議会の承認を経た後、JRと基本協定を締結する方向です。工事には10年以上かかり、実際に上野東京ラインが川口駅に停車するようになるのは、2037年以降になるそうです。
上野東京ラインの停車により、川口駅から東京駅は、京浜東北線を使う現状の25分から20分に短縮します。上野東京ラインは、建設中のJR羽田空港アクセス線に乗り入れる予定もありますので、羽田空港へも乗り換えなしとなり、38分くらいで直結する計算です。大宮駅へも12分程度になりそうで、東北・上越・北陸方面へ新幹線を利用する旅行者も便利になります。
そうした利便性を考えると、上野東京ライン停車により、川口周辺は東京観光の宿泊基地としても注目されるようになるでしょう。都内よりお手頃な値段で泊まるのに悪くない立地で、ホテルの建設も増えそうです。
一方、既存の上野東京ライン利用者にとっては、停車駅が一つ増えるだけです。所要時間の増加は避けられませんし、ラッシュ時の混雑増も懸念されますから、川口市に用事のない方には、特にいいことはありません。
もっと心配なのは、京浜東北線です。これから人口減少時代を迎え、通勤電車の混雑は緩和される見込みです。そのうえ川口駅の利用者が上野東京ラインに移ったら、京浜東北線の利用者は減るでしょう。
うがった見方をすれば、JRは人口減少を視野に、運行の効率化を図るため、ホーム増設を受け入れたのかもしれません。
上野東京ラインの川口駅停車後、京浜東北線が赤羽以北で減便されてしまわないか、気がかりです。
(旅行総合研究所タビリス代表)