じゃらんリサーチセンターは3日、「新型コロナウイルス感染症による旅行市場への影響」調査の結果を発表した。
株式会社リクルートライフスタイル(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:淺野 健)の観光に関する調査・研究、地域振興機関「じゃらんリサーチセンター」(センター長:沢登 次彦)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の旅行業界への影響度を旅行者の視点から測り、地域および宿泊施設を主とした今後の回復期に向けた具体的施策に役立てていただくために、「新型コロナウイルス感染症の旅行市場への影響」調査を実施しました。その結果をご報告いたします。
調査トピックス
旅行時期別に見た希望する国内宿泊旅行の目的、旅行スタイル
夏休み前までの旅行は「宿にこもる旅」「屋外型旅行」が多い特徴
秋になると「宿泊施設にとどまりあまり出歩かない旅行」の割合は減るが、「自家用車で移動する旅行」は時期を問わず需要あり
《夏休み前》
・男性20代で旅行を希望する人が17.1%と高い
・希望する旅行スタイルは「自家用車で移動する旅行」が最も高く56.2%。他の時期と比べて「居住地の都道府県内の旅行」(32.6%)や、「宿泊施設にとどまり外をあまり出歩かない旅行」(22.5%)が高い。
・旅行目的は「地元の美味しいものを食べる」(52.8%)、「温泉や露天風呂」(46.1%)「宿でのんびり過ごす」(40.4%)が上位。他の時期と比べて「まちあるき、都市散策」(25.8%) や「花見や紅葉などの自然観賞」(21.3%)など、屋外型旅行が人気。
《夏休み中》
・若年層に加えてファミリー旅行の需要が高まり、夏休み前と比べて「テーマパーク」(24.3%)目的の割合が高くなる。
《秋~年末》
・男性60歳以上、女性50代で旅行を希望する割合が高まる
・「宿泊施設にとどまりあまり出歩かない旅行」の割合は減少する一方、「自家用車で移動する旅行」はいずれの時期においても50%以上が希望している。
《2021年以降》
・「飛行機で移動する旅行」(31.0%)や、目的では「買い物、アウトレット」(25.7%)などの需要が高まる。
旅行者が施設に求める感染症防止対策
感染症防止対策の徹底は大前提。対策を事前に告知してほしいという声も多い
・旅行者が宿泊施設に対して求める感染防止対策は「従業員がマスク・消毒を徹底して行っている」(56.7%)が最も高い。
・感染症防止対策を講じるだけでなく、その情報を告知してほしいという声も多い。
~じゃらんリサーチセンター 研究員の解説~
調査結果からは、国内宿泊旅行の本格的な戻りは、シニア層の旅行需要が増す2020年秋以降となりそうです。また、宿泊施設などの感染防止対策は対策を講じるだけでなく、宿泊予約前に告知することが重要で、そのことが結果的に集客にもつながると思われます。
じゃらんリサーチセンター 研究員 森戸香奈子
旅行時期別に見た希望する国内宿泊旅行の目的、旅行スタイル
夏休み前は県内旅行や宿のおこもり旅、ひとり旅など。夏休みはファミリー旅行の需要が高まる
旅行を希望する人は、男性20代で夏休み前から夏休み中の早い時期を希望する割合が高い。男性60歳以上や女性50代では2020年の秋から年末、また女性では「わからない・感染状況による」が高い。
希望する旅行スタイルでは、夏休み前は「居住する都道府県内の旅行」「ひとり旅」、夏休み中は「キャンプ」「家族連れ」などが他の時期より高い。一方「宿泊施設にとどまり外をあまり出歩かない旅行」は夏休み頃まで高いが秋以降は下がる。「自家用車で移動する旅行」は時期を問わず需要が高い一方「飛行機で移動する旅行」は2021年以降に大きく伸びる。
旅行目的は夏休みは「テーマパーク」が増加、「温泉や露天風呂」「名所、旧跡の観光」は秋以降、「買い物、アウトレット」は2021年以降増加する。
■希望する国内宿泊旅行の時期(複数回答/国内宿泊旅行希望者)
■時期別に見た希望する国内宿泊旅行スタイル(複数回答/各時期ごとの国内宿泊旅行希望者・「わからない・感染状況による」と回答した人を除く)
■時期別に見た希望する国内宿泊旅行目的(複数回答/各時期ごとの国内宿泊旅行希望者・「わからない・感染状況による」と回答した人を除く)
旅行者が施設に求める感染症防止対策
徹底的な衛生対策に加え、実施内容を事前に知りたいという声も多い
もしもの場合の対応策や、柔軟なキャンセル対応の要望も
宿泊施設について求めることを見てみると、最も高いのは「従業員がマスク・消毒を徹底して行っている」(56.7%)、次いで「部屋の備品(TVのチャンネルや充電器など)までチェックイン前に、消毒がされている」(45.6%)、「個室での食事」(43.8%)が続く。5位には「従業員の安全対策が、施設内・HPに掲載され、徹底している」(40.3%)が入った。屋内型施設に求めることも同様に「従業員がマスク・消毒を徹底して行っている」(55.5%)が最も高い。一方、屋外型施設については、従業員に求めることが上位に並ぶ一方、「入館・入場人数に制限を設けている」(31.0%)、「並ぶ際にソーシャル・ディスタンスが守られている」(30.1%)など、顧客に対する要望もランクインした。自由回答を見ると、3密対策だけでなく自分自身が感染した場合の発熱時の対応や、キャンセルの可否などを心配する人もいる。周りの目を気にする声も多い。
■施設に求める感染症防止対策《上位10項目》
(複数回答/国内宿泊旅行希望者)
■国内旅行への要望例(自由回答コメント)
じゃらんリサーチセンター研究員の解説
じゃらんリサーチセンター 研究員 森戸香奈子
調査研究担当、研究冊子「とーりまかし」デスク。 2007年4月より現職。「じゃらん宿泊旅行調査」「2030年観光の未来需要予測研究」など担当。海外旅行領域「エイビーロード・リサーチ・センター」兼務
国内宿泊旅行市場の本格的な回復は、シニア需要の戻る2020年秋以降
調査結果からは、夏休み前までは若年層を中心とした宿にこもる旅、もしくは屋外中心の旅行が動きやすく、夏休みはファミリー旅行が一部戻り、テーマパークなどの需要増が見込まれそうなことが分かりました。一方で、そもそも国内宿泊旅行は50歳以上がその半数程度を占める市場です。その主要ターゲットであるシニア層は旅行に慎重になっている様子も結果からはうかがえました。彼らの需要回復が見込めるのは2020年秋以降で、市場全体の本格的な回復も秋以降となるでしょう。また、女性は男性と比べ態度保留者が多い傾向があり、女性グループなどの戻りも遅い可能性があります。夏休み前とその後は柔軟にターゲット戦略を考え対応していくことが求められます。
旅行先については、夏休み前までは県内旅行の需要が高いものの、夏休みになると県内旅行の割合は下がる結果となりました。夏休みをきっかけに一気に県外への旅行が広がるかもしれません。マイカー旅の需要は時期を問わず需要が高く、長く続きそうです。一方、飛行機を利用した遠方への旅行は2021年以降に希望する割合が高く出ており、本格的な回復も2021年以降と考えられます。
衛生対策の徹底は大前提。今後の旅行検討行動の重要な指標の一つに
地域で連携し、新しい「観光のにぎわい」を模索する時代に
調査結果のコメントからも分かるように、旅行者は施設に対して従業員による消毒や検温など感染防止対策の徹底を求めており、きちんと対策を講じている施設を選びたいという意見が多く見られます。
衛生対策は今後旅行を検討する際の重要な条件となることが考えられ、施設にとっては対策を告知することが結果的に集客にもつながるでしょう。また、観光地ににぎわいを求める声もあり、衛生対策と観光復興のバランスは今後の課題となりそうです。
■国内宿泊旅行市場 時期別に予測される旅行スタイルの変化
『じゃらんnet』の新型コロナウイルス感染症への取り組み
『じゃらんnet』では、皆さまに少しでも安心して旅行を楽しんでいただくために、各宿泊施設が実施している新型コロナウイルス感染防止に関する取り組みを分かりやすくご紹介することと、感染防止の取り組み内容を紹介するために使える画像を提供することで、宿泊施設の準備工数を削減することの二つを目的として、2020年6月24日(水)より下記の取り組みを開始しております。
①『じゃらんnet』の各宿泊施設の基本情報内に、新型コロナウイルス感染症への取り組み内容を紹介するページを追加
『じゃらんnet』内、各宿泊施設ページの基本情報内に、「新型コロナウイルス感染症への取り組み」を新項目として追加します。宿泊施設は、このページに情報を追加することで、宿泊を検討するお客さま・実際に宿泊するお客さまに、新型コロナウイルス感染症への取り組み内容を伝えることができます。
※情報の掲載タイミングは、宿泊施設ごとに変わります。
②新型コロナウイルス感染防止の取り組みの紹介に使用可能なピクトグラムを宿泊施設に無償提供
「消毒液の設置」や「個室での食事提供」などの取り組みや宿泊利用者へのお願いを分かりやすく伝えることができる27種類のピクトグラムを作成しました。『じゃらんnet』の宿泊施設に向けて無償で提供いたします。宿泊施設は、『じゃらんnet』内の施設紹介ページや施設独自のWebサイトへの掲出、プリントアウトして実際の施設内での掲出などに利用できます。
※情報の掲載タイミングは、宿泊施設ごとに変わります。
■ピクトグラム例