日本FP協会は12月15日、「くらしとお金に関する意識調査2020」の結果を発表した。
日本FP協会(所在地 東京都港区、理事長 白根壽晴)は、2020年10月29日~11月4日の7日間、全国の20代~60代の男女を対象に「くらしとお金に関する意識調査」をインターネットリサーチで実施し、3,000名の有効サンプルの集計結果を公開しました(調査協力会社:株式会社クロス・マーケティング)。
■アンケート調査結果
【コロナ禍における家計状況】
◆一年前と比べ、収入は約7割が「変わらない」、約2割が「減った」と回答
◆2020年10月の支出割合は? 1位は「食費」(30.6%)。2位「住宅費」(18%)、3位「光熱・水道費」(11%)
新型コロナウイルス感染拡大前の2019年10月の家計状況と、新型コロナウイルス感染拡大後の2020年10月の家計状況を聞きました。
収入は全回答者(3,000名)全体の約7割が「変わらない」としている一方、約2割は「減った」と回答。新型コロナウイルス感染症の流行による業績悪化を受け、収入減となった人が一定数いることがわかりました。
2020年10月の支出は「食費」が約3割で最も多く、「住宅費」(18%)、「光熱・水道費」(11%)と続きます。
預貯金は全体的に収入と同傾向ですが、投資(株式)は9割近くが「変わらない」と回答。中央値は「0円」であり、株式投資をする人が今回の回答者では少なかったことがうかがえます。
【コロナ禍における支出の変化】
◆一年前と比べ、「食費」、「光熱・水道費」は全体の2割以上が「増えた」と回答
◆全体の2割以上で「減った」のは「衣服・美容費」、「娯楽費」
新型コロナウイルス感染拡大前の2019年10月と、新型コロナウイルス感染拡大後の2020年10月の支出を比較して、それぞれの費目ごとに支出の変動があったかを確認すると、「食費」、「光熱・水道費」は全体の2割以上から「増えた」との回答が。政府からの外出自粛の要請など、在宅時間が増えたことが影響していると考えられます。
一方で、「衣服・美容費」、「娯楽費」は全体の2割以上が支出が減ったと回答。こちらも同様に、外出ができなくなったことで服や化粧品を買う必要がなくなった、外食や遊びに行けなくなったことなどが減少の要因として想像できます。
【コロナ禍における支出の工夫・不具合】
◆工夫していることは「外食を控える」が最多、「キャッシュレス決済を利用する」も3割近い結果に
◆上手くいっていないと思うことには「無駄な食費があると思う」、「無駄な光熱・水道費があると思う」
新型コロナウイルス感染拡大後、支出面で工夫していることを聞くと「外食を控える」が最も多い結果となりました。「キャッシュレス決済を利用する」も3割近いなど、新たなサービスを利用して支出面を抑えようとする工夫もみられる一方、家庭の収支の見直しや、加入保険の見直しは全体の5%~11%でしか行われていないようです。
対して、新型コロナウイルス感染拡大後、支出面において上手くいっていないと思うことでは、「無駄な食費があると思う」、「無駄な光熱・水道費があると思う」といった回答が上位2位に入りました。新型コロナウイルス感染拡大後に増えたと回答した人が多い2費目について、多くの人が課題を感じていることが見えます。
また、預貯金を切り崩している人、支出の減らし方が分からない人もそれぞれ1割程度みられ、やりくりに苦労している人が一定数いることも分かりました。
【お金に対する不安(現在の不安・将来の不安)】
◆現在の収入・預貯金に対する不安は全体の約6割、現在の支出に対する不安は約5割
現在もしくは将来のお金に対する不安をどれくらい感じているかをみると、現在の収入・預貯金に対する不安は全体の約6割、現在の支出に対する不安は約5割、現在の投資に対する不安は約2割が感じていることが分かります。また、将来の不安は現在の不安と比較して全体的にスコアがやや上昇していました。
新型コロナウイルス感染拡大後の収入の変化によっても回答の傾向に違いが出ており、収入が減った人では現在の収入に対する不安、将来の収入に対する不安のどちらも8割以上の人が感じており、ほとんどの人がお金に対して不安に思っていることが分かりました。
唯一お金を増やす手段となりうる投資に対する不安は、現在の不安、将来の不安どちらにおいても他の項目と比較してスコアが低く、収入が減って困っている人であろうとも投資への関心は収入などと比較して低いことが推察されます。
【現在のお金に対する不安】
◆全体の約6割、収入が減った人のうちでは8割以上が「不安を感じる」と回答
◆収入・支出・預貯金の「お金に対する不安を解消する情報」を知りたい 収入の増減に関わらず5割超え
現在のお金に対する不安をどれくらい感じているかという質問では、新型コロナウイルス感染拡大後の収入の変化によって、不安の感じ方が異なっていることが分かります。
収入については全体の約6割が不安を感じると回答している一方、収入が減った人に絞ると同じ回答をしている人は8割以上になりました。
現在のお金に対する不安を解消する情報があれば知りたいかどうかは、収入が減った人ほど知りたいと回答している傾向にありますが、収入が増えた人でも「とてもそう思う」、「そう思う」と回答した人がいずれの項目でも約4割~5割を占めました。収入が減った人ほど情報を欲しているものの、収入が増えた人においてもお金に関する情報を欲しているようです。
【将来のお金に対する不安】
◆「現在」よりも「将来」のお金に対する不安が全体的に多い結果に
◆将来の収入・支出・預貯金の「お金に対する不安を解消する情報」を知りたい人は6割超え
将来のお金に対する不安をどれくらい感じているかについては、前ページの現在のお金に対する不安よりも全体的に割合がやや高い結果になっており、将来の先行きが見えない不安感の表れだと考えられます。
将来のお金に対する不安を解消する情報があれば知りたいかについても、現在のお金に対する不安を解消する情報以上に知りたいと回答している割合が高い傾向にあります。
【お金のこと以外に対する不安】
◆全体の6割以上が不安に思うのは「自分の健康」、「家族の健康」
◆収入が減った人の約6割が「何に対してなのか分からないが、漠然とした不安」を感じると回答
お金のこと以外に対する不安では、お金に対する不安と同様、新型コロナウイルス感染拡大後に収入が減った人ほど、ほとんどの項目で不安を感じている傾向にあることが分かりました。
特に「何に対してなのか分からないが、漠然とした不安」は収入が減った人の約6割が感じると回答しており、収入の減少が今後の生活全般に対する不安も増長させているようです。
【アフターコロナにしたいこと】
◆1位は「国内観光旅行に行く(宿泊を伴う)」、次いで「外食に行く」、「国内観光旅行に行く(日帰り)」がトップ3に
新型コロナウイルスの流行収束後に何をしたいかという質問では、「国内観光旅行に行く(宿泊を伴う)」が最も多く、「外食に行く」、「国内観光旅行に行く(日帰り)」が次ぐ結果となりました。特に女性の約半分が「国内観光旅行に行く(宿泊を伴う)」を挙げています。
GoToトラベルやGoToイートといったキャンペーンが行われているものの、思うようには旅行や外食に行けない状況が希望に反映されているとうかがえます。
【withコロナ、アフターコロナにおける「ニューノーマル(新しい生活様式)」の認知状況】
◆「ニューノーマル(新しい生活様式)」の認知状況は約7割、うち2割以上が「内容も知っている」と回答
◆「ニューノーマル」で思い浮かべるもの 1位「3密を回避する」、2位「まめに手洗い・手指消毒をする」
withコロナ、アフターコロナにおける「ニューノーマル(新しい生活様式)」の認知状況をみると、全体の約3割が「内容も知っている」と回答しました。名称のみ知っている人も含めると約7割にのぼります。
「ニューノーマル(新しい生活様式)」と聞いて思い浮かべることは、「3密を回避する」、「まめに手洗い・手指消毒をする」が高くなりました。「会議はオンラインでおこなう」、「電子決済を利用する」、「持ち帰りや出前、デリバリーを使う」といった、コロナ禍で拡大したサービスの利用も想起されています。