TSP太陽は4月27日、“オーバーツーリズム”に関するアンケート調査の結果を発表した。
2020年に1回目の緊急事態宣言が発令されてから、約3年が経過しようとしています。コロナ禍を経て、ウィズコロナの時代に変わりつつあるなか、「全国旅行支援」が2023年4月以降も実施され、全国的に観光客が増え、インバウンド需要も戻りつつあります。急激な観光客増加に伴い、旅行業界を中心にオーバーツーリズムの問題が発生する可能性が高まっています。こうした変化のなか、オーバーツーリズムをどのように捉えられているのか、調査を実施しました。
調査期間は2023年2月21日~28日、全国の20歳から59歳の観光地・行楽地でお客様と直接やり取りをされている、飲食・観光・宿泊・娯楽業の従事者を対象に、インターネットリサーチを実施し、517名の有効回答を集計しました。
■“オーバーツーリズム”“マスギャザリング”とは?
“オーバーツーリズム”の定義は、観光客が過剰に増加し、観光地の地域住民の生活や自然環境に悪影響を与えることで、日本語では“観光公害”とも言われています。
“「特定の観光地において、訪問客の著しい増加等が、市民生活や自然環境、景観等に対する負の影響を受忍できない程度にもたらしたり、旅行者にとっても満足度を大幅に低下させたりするような観光の状況」”
引用元:観光白書 平成30年版|観光庁
「『オーバーツーリズム』という言葉を知っていますか?」という問いに対し、「聞いたことがあり、意味を知っている」という回答が33.3%、「聞いたことはあるが、言葉の意味までは知らなかった」31.9%、「聞いたことがない」34.8%という結果でした。オーバーツーリズムという言葉を知っている・聞いたことがあるという回答が約6割を超えていることからも、観光業にかかわる従事者にとっては、注目の話題であることがわかります。
“「特定の場所に特定の目的を持ってある一定期間, 人々が集積することで特徴づけられるイベントで, その国やコミュニティの計画や対応リソースに負担をかける可能性があるもの」”を“マスギャザリング”と定義されています。
引用元:マスギャザリングイベント(東京2020大会)と感染症対策|国立感染症研究所
“マスギャザリング”では、人が集まることが分かっているイベントでは参加者の安全確保はもちろんのこと、開催地域に負担を与えないことも重要になります。開催場所の医療・公衆衛生への影響も考えながら計画的に準備し、十分なリソースを確保することが求められます。
■新型コロナウイルス関連の規制が緩和後の観光業への影響
「2022年10月以降、新型コロナウイルス関連の規制が緩和された状況下で観光地での好ましい影響をすべて選んでください」という問いに対し、「お客様の数が増えた」という回答が67.9%、「お客様と接する機会が増えた」40.6%、つづいて「お祭りやイベントなどが復活した」25.5%と、観光客数の増加を感じているという声が多く、また観光地の活気を取り戻しつつあることがわかります。
また、「現在と2020・2021年を比較して、現状起こっている問題をすべて選んでください」という問いに対し、人手不足(52.0%)、クラスターに対する不安(34.0%)、混雑によるオペレーションの低下(29.6%)、交通機関の混雑・渋滞(24.4%)と混雑に対する不安が多く挙げられていることが判明しました。
同様に、「今後起こるかもしれない問題」についても、人手不足(50.9%)、混雑によるオペレーションの低下(37.5%)、クラスターに対する不安(33.7%)、交通機関の混雑・渋滞(24.6%)となっています 。また現状は顕在化していないものの、今後訪日外国人の増加に伴い、外国人とのコミュニケーションに不安を覚える方も多いようです。
“オーバーツーリズム”問題が起こる原因として、下記の理由が挙げられます。
・LCCなど手軽に安価で旅行できる
・アジア圏の中間層の旅行客の増加
・訪日ビザの緩和、免税
・水際対策の緩和
・民泊・ゲストハウスなど安価な宿泊施設の増加
・SNSの普及による局地的な集客
・全国旅行支援制度により、連休に旅行が集中
様々な要因の結果、これからさらに観光客が増加し、サービスが行き届かなくなった結果、観光地の満足度を下げてしまう原因になりかねません。