【データ】年功序列をはじめとする人事評価制度に関する意識調査


 総合人事コンサルティング会社のフォー・ノーツ(東京都港区)は、全国のオフィスワーカー400名を対象に「年功序列をはじめとする人事評価制度に関する意識調査」を発表した。調査結果によると、勤め先を「年功序列である」とした人の半数以上(54.9%)が「転職したい」と答えた。

 本レポートでは、調査対象者を「年功序列である」グループと「やや年功序列である」グループ、「年功序列ではない」グループに分け、得られたアンケート結果を分析し、年功序列をはじめとする人事評価制度の実態及び、それらの抱える課題点と解決策について考察しました。
  •  結果分析のポイント

●いまだに多くの企業で、年功序列の要素が併存→Q1~3参照
6割以上の会社が「成果評価」・「行動評価」を評価項目として採用していた。人事評価で、最も重視されているポイントは、「成果・業績など、仕事の結果」が43.3%で最多となった。
一方、自身の勤める会社が「年功序列である」「やや年功序列である」と回答した人は7割以上を占め、多くの企業で、表向きの評価制度とは別に年功序列の要素が併存している様子が伺えた。

●勤続年数は「年功序列である」グループが最短。
人事評価ポイント別では「経験・勤続年数・年齢など」グループが最短
→Q4
勤続年数については、「年功序列である」と答えた回答者グループが最も短く(平均勤続年数10.2年)、「年功序列ではない」グループが最も勤続年数が長い(平均勤続年数14.1年)という結果となった。
また、「人事評価で、最も重視されているポイント」ごとに回答者グループを分けたところ、「経験・勤続年数・年齢など」を最も重視する評価ポイントとした回答者グループが、最も平均勤続年数が短く(平均勤続年数10.1年)、「成果・業績など、仕事の結果」を重視するとした回答者グループが最も勤続年数が長かった(平均勤続年数15.3年)。

●「年功序列である」グループは、半数以上の54.9%が「転職したい」→Q5
 「年功序列である」グループでは、「転職したい」理由として
「給与や処遇を含め、人事評価に納得できない」「会社のことを信頼できない」が顕著。
→Q6
「現在勤めている会社でいつまで働きたいですか。」との質問で、「転職したい」と答えた割合が最も高かったのは、「年功序列である」と答えた回答者グループで、半数以上の54.9%が「転職したい」と答えた。
「年功序列である」と回答したグループの特徴として、「転職したい」理由に「給与や処遇を含め、人事評価に納得できない」(71.8%)、「会社のことを信頼できない」(41.0%)を挙げる割合が、他グループに比べ著しく高く、「年功序列である」グループ特有の問題が明らかになった。

●「年功序列である」グループでは、人事評価に「納得していない」理由として、
「評価基準が曖昧・社員に明示されていない」(62.9%)、
「評価結果について、納得のいく説明をしてもらえない」(51.4%)が顕著。
→Q8
「年功序列である」と回答したグループの特徴として、人事評価に「納得していない」理由に「評価基準が曖昧・社員に明示されていない」(62.9%)、「評価結果について、納得のいく説明をしてもらえない」(51.4%)を挙げる割合が、他グループに比べ著しく高く、「年功序列である」グループ特有の問題が明らかになった。

  • Q.1 あなたの会社の評価制度で、採用されている評価項目はなんですか。(複数回答可)

 勤務先の評価制度で採用されている評価項目を聞いたところ(複数回答可)、「成果評価(成果目標の達成度)」が最も多く、7割近くの会社が評価項目として採用していた。
次いで「行動評価(目標達成に向けたプロセス・行動)」(60.5%)、「能力評価(知識やスキル)」(50.5%)となった。

  • Q.2 あなたの会社の人事評価で、最も重視されているポイントはなんですか。(単数回答)

勤務先の人事評価で、最も重視されているポイントを聞いたところ(単数回答)、「成果・業績など、仕事の結果」が43.3%となり、他項目と大きく差をつけ、最多となった。
「経験・勤続年数・年齢など」を最も重視されているポイントとした回答者は、11.3%にとどまった。

  • Q.3 あなたの会社は年功序列ですか。(単数回答)

 勤務先の会社が年功序列かどうかという質問(単数回答)に対しては、「年功序列である」・「やや年功序列である」と答えた回答者があわせて70%以上を占め、評価ポイントとしては成果を重視する(Q1、Q2)としながらも、多くの企業では、年功序列の要素も併存している実態が明らかとなった。

  • Q.4 現在勤めている会社での勤続年数を教えてください。(単数回答)

 

 勤続年数についての質問(単数回答)では、Q3で「年功序列である」と答えた回答者グループが最も短く(平均勤続年数10.2年)、ついで「やや年功序列である」と答えたグループ(平均勤続年数13.8年)となり、「年功序列ではない」グループが最も勤続年数が長い(平均勤続年数14.1年)という結果となった。

また、Q2の回答で得られた「人事評価で、最も重視されているポイント」ごとに回答者グループを分けたところ、「経験・勤続年数・年齢など」を最も重視する評価ポイントとした回答者グループが、最も平均勤続年数が短く(平均勤続年数10.1年)、「成果・業績など、仕事の結果」を重視するとした回答者グループが最も勤続年数が長かった(平均勤続年数15.3年)。

  • Q.5 あなたは現在勤めている会社でいつまで働きたいですか。(単数回答)

 「現在勤めている会社でいつまで働きたいですか。(単数回答)」との質問では、「転職したい」と答えた割合が最も高かったのは、Q3で「年功序列である」と答えた回答者グループで、半数以上の54.9%が「転職したい」(今すぐにでも転職したい(15.5%)、いい転職先があれば転職したい(36.3%))と答えた。

 「現在勤めている会社でいつまで働きたいですか。(単数回答)」との質問への回答を、年代別にみた場合、全体では「転職したい」と答えた割合が最も高かったのは20代で、62.0%が「転職したい」(今すぐにでも転職したい(15.0%)、いい転職先があれば転職したい(47.0%))と答え、年齢が上がるほどその割合は低くなった。
「年功序列である」グループに限ってみると、「転職したい」(今すぐにでも転職したい、いい転職先があれば転職したい)と答えた割合が最も高かったのは20代、ついで40代だった。

  • Q.6 転職を希望する理由を教えてください。

 Q5で「転職したい(今すぐにでも転職したい、いい転職先があれば転職したい)」と答えた回答者にその理由を聞いたところ、全体では「給与や処遇を含め、人事評価に納得できない」(47.8%)「今の会社では、自分が成長できるビジョンがもてない」(47.3%)が多く理由として挙げられた。

一方、Q3で「年功序列である」と回答したグループの特徴として、「転職したい」理由として、「給与や処遇を含め、人事評価に納得できない」(71.8%)、「会社のことを信頼できない」(41.0%)を挙げる割合が、他グループに比べ著しく高く、「年功序列である」グループ特有の問題が明らかになった。

  • Q.7 現在のあなたの給与は、あなたの仕事のパフォーマンスにみあっていると思いますか(単数回答)

 「現在のあなたの給与は、あなたの仕事のパフォーマンスにみあっていると思いますか」(単数回答)との質問では、「パフォーマンスに対して、適切な給与が支払われていると思う」と答えた割合が最も低かったのは、Q3で「年功序列である」と答えた回答者グループ(23.9%)で、と全体(39.8%)と比べても、著しく低かった。

 また、重視されている人事評価のポイント(Q2)別では、「パフォーマンスに対して、適切な給与が支払われていると思う」と答えた割合が最も低かったのは、「経験・勤続年数・年齢など」と答えた回答者グループで、24.4%だった。
Q6で、「年功序列である」と回答したグループは、他グループに比べ、「転職したい」理由として「給与や処遇を含め、人事評価に納得できない」を挙げる率が著しく高かった(71.8%)が、さらにその結果を裏付ける結果となった。

  • Q.8 あなたは、現在勤めている会社の人事評価に納得していますか。(単数回答)

 

 「現在勤めている会社の人事評価に納得していますか。」(単数回答)との質問では、「納得していない」(あまり納得していない、全く納得していない)と答えた割合が最も高かったのは、Q3で「年功序列である」と答えた回答者グループ(29.3%)だった。
Q6で、「年功序列である」と回答したグループは、他グループに比べ、「転職したい」理由として「給与や処遇を含め、人事評価に納得できない」を挙げる率が著しく高かった(71.8%)が、さらにその結果を裏付ける結果となった。

  • Q.9 人事評価のどのような点に、不満を感じていますか。(複数回答可)

 Q3で、人事評価に「納得していない」(あまり納得していない、全く納得していない)と答えた回答者のみにその理由を聞いたところ、全体では「評価基準に沿って正しく評価してもらえない」(43.4%)次いで「評価基準が曖昧・社員に明示されていない」(42.2%)が多く理由として挙げられた。

一方、Q3で「年功序列である」と回答したグループの特徴として、人事評価に「納得していない」理由に「評価基準が曖昧・社員に明示されていない」(62.9%)、「評価結果について、納得のいく説明をしてもらえない」(51.4%)を挙げる割合が、他グループに比べ著しく高く、「年功序列である」グループ特有の問題が明らかになった。

 Q3で、人事評価に「納得していない」(あまり納得していない、全く納得していない)と答えた回答者のみにその理由を聞いた結果を年代別でみると、20代では「評価結果について、納得のいく説明をしてもらえない」(53.1%)、「評価基準が曖昧・社員に明示されていない」(43.8%)、「目標設定が適切に行われていない」(37.5%)が、理由として多くあげられ、中でも「評価結果について、納得のいく説明をしてもらえない」「目標設定が適切に行われていない」は、他の年代に比べても高く、20代の特徴が顕著になった。

  • Q10 あなたの会社は、従業員エンゲージメントが高い(社員が会社を信頼しており、会社に貢献したいと思っている)と思いますか。

​ 「あなたの会社は、従業員エンゲージメントが高いと思いますか。」(単数回答)との質問では、「低いと思う」(低いと思う、とても低いと思う)と答えた割合が最も高かったのは、Q3で「年功序列である」と答えた回答者グループ(63.4%)だった。
Q6で、「年功序列である」と回答したグループは、他グループに比べ、「転職したい」理由として「会社のことを信頼できない」を挙げる率が著しく高かった(41.0%)が、さらにその結果を裏付ける結果となった。

  •  調査概要

調査名:「年功序列をはじめとする人事評価制度に関する意識調査」
対象者:現在勤めている会社に人事評価制度が「ある」と答えた日本国内のオフィスワーカー
※正社員もしくは契約社員に限る。派遣社員、パート、アルバイトは除く。
対象地域:全国
男女比:男性69.5% 女性30.5%
調査方法:インターネット調査
調査期間: 2022年6月28日~6月29日
回答数:20代・30代・40代・50代以上 各100名ずつ 計400名

  •  総評

年功序列の企業では、特に20代・40代社員の転職意向が高い
「評価基準の不透明さ」・「評価結果に対するフィードバック不足」が不満に繋がる!

これまで「年功序列」と言えば、時代に合わない仕組みとしてその問題点が取り沙汰されており、日本企業はすぐにでも脱・年功序列を果たさなければならないと言われてきた。

前回の調査では、多くの企業で成果評価や行動評価をはじめとする様々な人事評価制度が導入されているものの、未だに大半の企業で年功序列的な要素が残っているという実態が明らかとなった。また、年功や勤続以外を評価する仕組みを持つ企業にとって、年功序列的な要素が組織に良い影響をもたらす可能性が示唆された。一方で前回の結果は、企業がしっかりとした人事制度を運用した結果、年次を経るごとに社員が成長し、高い処遇を得るに至った(適正な評価を運用した結果、望ましいかたちで年功序列が実現した)とも考えられる。

「年功序列をはじめとする人事評価制度に関する意識調査」アンケート結果①(フォー・ノーツ)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000013.000073219.html

一方、今回は年功序列をはじめとする人事評価制度が「社員の定着」にどのような影響を及ぼすのかを調査した結果、年功序列が「社員の定着」にネガティブな影響を与える可能性が示唆された。

年功序列の企業はそうでない企業に比べて社員の転職意向が高く、特に20代および40代社員においてその傾向が顕著であった。また、それらの年代では「今すぐにでも転職したい」という強い意向を示す回答割合も高く、一部年代における不安感・危機感の大きさが見て取れた。20代社員については、近年、多くの企業で早期離職が問題となっているが、特に年功序列という仕組みは若年層が早々に会社を見限る要因となっている可能性が高い。40代社員については、黒字リストラや早期退職など、自分たちより上の世代が会社からどのような扱いを受けるかを間近でみた結果、行く末に強い危機感を抱いているのではないかと考えられる。

さらに社員が転職を希望する原因をひも解いていくと、年功序列の企業では、評価への納得感パフォーマンスに対する適正な処遇を受けていないという感覚が他のグループよりも高いことがわかった。具体的には「自身がどのような基準で評価されているかが明示されていない」「評価結果に対する納得のいく説明がされていない」という点が、特に評価への不満につながっているようだ。これらは、まさに年功序列という仕組みがもたらす弊害だろう。年功序列は、能力や勤続・年齢(能力は勤続により高まるという前提)を評価する仕組みであるが、それらがどのようにパフォーマンスに結びついているかは説明が難しい。そのため会社としては、社員に評価基準を明示しづらく、評価結果について納得のいく説明ができない。

また、評価への不満については、年代によって捉え方が変わる点も非常に興味深い。仕事を覚えて間もない20代社員は、評価結果について納得のいく説明があるかどうかということに関心が強く、評価自体が適正であるかは二の次のようだ。一方、働き盛りの30・40代は自身の仕事ぶりを正しく評価されているかについて、より関心が向いていることが分かる。

今回の調査結果をもとに考えると、転職が容易になり人材の流動性が高まるなか、年功序列を長く続けてきた企業をはじめ、人事評価のあり方に腹を括って向き合わずにきた企業が社員を繋ぎとめることは、もはや難しいのかも知れない。

人材の定着については、様々な要素が複雑に絡み合うため原因を特定することは困難だが、もし自分の会社で社員の定着に課題を感じているのであれば、今回の調査結果を参考に人事評価制度を見直してみることをおススメしたい。

(フォー・ノーツ株式会社 代表取締役社長 西尾 太)


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