J.D.パワーは5月29日、米国で実施した旅行に関する調査の結果を発表した。
顧客満足度(CS)調査や消費者動向に関するリサーチ・コンサルティング会社である株式会社J.D. パワー ジャパン(本社:東京都港区、代表取締役社長:山本浩二、略称:J.D. パワー)は、米国で実施した旅行に関する調査結果を発表いたします。
米国では新型コロナウィルスの爆発的な感染拡大により、日本以上に甚大な被害を受けていますが、徐々に経済活動の再開も進みつつあります。J.D. パワーでは、3月中旬と4月中旬の2回、過去1年間に旅行経験がある消費者を対象に調査を実施し、コロナ感染拡大後の旅行に対する意識を明らかにしました。
日本でも緊急事態宣言が解除され、行動制限を緩める動きが広まっています。依然深刻な状況ながらも日本より先に経済再開の動きが進んでいる米国の消費者の「旅行」に対する意識を見ることで、国内の今後の旅行業界や日本人のトラベルライフについて考える一助にご活用いただけますと幸いです。
= 調査概要 =
■調査方法:インターネット調査
■調査期間:①2020年3月12日~13日(3月中旬) ②4月17日~19日(4月中旬)
■対象者:過去1年間にビジネスもしくはプライベート目的で1泊以上の米国内旅行をしたことのある米国の消費者 ①1,633名 ②1,155名
TOPICS①:今後6か月以内の旅行に関する意向 |
4月の新型コロナの新規感染ピークが米国民の旅行意向を減少させるも、6割以上が今後6か月以内のビジネスやプライベート目的での旅行意向を示す。
今後6か月以内での旅行予定の割合は、3月中旬時点よりも4月中旬時点で10ポイント近く低下しています。(レジャー目的:54%→43%、ビジネス目的:15%→7%)
感染拡大の初期である3月中旬時点では全体の84%が、今後6か月以内にプライベート目的もしくはビジネス目的の旅行を予定していましたが、4月中旬時点にはその割合が62%に減少しています。
米国における感染の爆発的拡大が米国民の旅行意欲に大きくブレーキをかけてはいますが、依然として6割以上が旅行意向を示しています。
TOPICS②:今後6か月以内に旅行をしない理由 |
移動制限措置、経済的余裕のなさ、感染への不安が旅行を妨げる3大要因。
3月中旬に比べると感染を心配する割合は減少するも、一方で自身の経済的要因が増加。
今後6か月以内に仕事やプライベート目的での旅行予定がない層に、その理由を尋ねたところ、
✔「今後の6か月間に旅行を計画できるほど移動制限措置が緩和されると思わない」(42%)
✔「旅行をする経済的余裕がない」(41%)
✔「新型コロナウイルスのせいで旅行中に具合が悪くなることが心配」(38%)
という3つが4月中旬では主な理由となりました。
3月中旬時点と比較すると、新規感染のピークが過ぎたと考えている人が増加したためか、感染リスクを理由にあげる人の割合が減少しました。その一方で、感染拡大で経済に打撃を受けている状況を反映し、「経済的余裕がない」という理由が増加しています。
TOPICS③:今後の旅行中の新型コロナウイルス感染に対する不安 |
新規感染のピークを過ぎた4月中旬では、今後の旅行時における新型コロナウイルスへの感染の心配は減少しているが、依然として3割が不安を感じている。
今後、6か月以内の旅行を予定している層に、旅行中の自身の新型コロナウイルスへの感染をどの程度心配しているか尋ねたところ、3月中旬よりも5ポイントほど減少していますが、4月中旬時点では旅行中の感染を心配している割合は31%となっています。
4月中旬では、ビジネス旅行者、プライベート旅行者共に感染への心配は減少しているものの、ビジネス旅行者の方がプライベート旅行者よりも心配する割合が高い状況が続いており、ビジネス旅行へのより慎重な姿勢がみてとれます。
TOPICS④:今後してみたい旅行について |
旅行需要の回復は、まず「車での近場への旅行」(77%)から。「ホテル宿泊」の意向を持つ割合は約半数で、「民泊」を大きく上回る。「海外旅行」は20%にとどまる。
移動制限措置が解除された後、どのようなタイプの旅行であればしてみたいかを尋ねました。
上位は「車での近場の旅行」(77%)、「車での遠くへの旅行」(59%)となっており、プライベート空間が確保でき、他人と接触する機会の少ない「車」での旅行から回復していくと言えるでしょう。
「飛行機を利用しての国内旅行」も30%を超えていますが、「飛行機での海外旅行」は20%に留まり、飛行機を利用した、特に海外への渡航への意向回復には時間がかかりそうなことを示唆しています。
米国では、2001年9月11日に起きた同時多発テロ事件の後も、旅行需要は国内近場の車を利用した旅行から回復しました。今回も同じ傾向となることが考えられます。
また、「ホテル宿泊を伴う旅行」は48%と半数近くになっており、「民泊に滞在する旅行」の21%を大きく上回っています。これは、ホテルに対する衛生面での信頼を反映しているものと思われます。米国では民泊が広く普及していましたが、今回の新型コロナウイルスの流行による衛生観念に対する価値観の変化が、民泊利用に影響を与えていく可能性が考えられます。
TOPICS⑤:旅行関連事業者に求める対策について |
具体的な感染防止のための消毒方法や対策、旅行先の新型コロナウイルス発生状況といった特定の情報が望まれている。
今後の旅行に対する不安を払拭するために、旅行関連事業者(ホテル、航空会社、クルーズ会社、交通機関など)に求めることは何かを尋ねました。
最も多かったのが「実施している清掃、消毒、感染防止アクションについて知らせてくれる」(ビジネス旅行者42%、プライベート旅行者38%)、次いで「旅行先における新型ウイルスの発生状況を毎日アップデートしてくれる」(同36%、37%)となり、ビジネス・プライベート問わず、具体的な感染防止策、現地の感染発生状況を望んでいることが明らかになりました。
さらに、旅行中の感染に対して慎重な態度を示しているビジネス旅行者では、「共有スペース/客室内トイレへの手指消毒液の設置」「機内やホテル内の空気管理情報」の重要度もプライベート旅行者より高くなっています。
一方、プライベート旅行者はビジネス旅行者と比較して「キャンセル手数料の免除」「前払いの宿泊料金や航空券の全額払い戻し」といった金銭面での対応も重視しています。
J.D. パワー ジャパン GBI部門 トラベルインダストリー
シニア・マネージャー 日高志津枝 コメント
「新型コロナウイルスの感染拡大は、世界中の人々の旅行体験に甚大なる影響を与え、世界各国における移動制限は人々から旅行をする機会を奪っています。しかしながら、消費者の旅行に対する意向自体がなくなっているわけではありません。感染者数が世界最多となった米国では新規感染ピーク直後の4月中旬であっても、6割以上が今後6か月以内の旅行に意欲を見せています。
但し、旅行のスタイルには大きな変化が出ることは米国の調査結果からも明らかです。旅行を計画しながらも、新型コロナウイルスへの感染を不安視している消費者は3割に達し、特にビジネスで出張をする消費者の方が慎重な考え方を示しています。また、飛行機利用や民泊など、米国では日本より広く普及している手段の利用も、当面は需要の減退が続くと推察されます。
このような不安を感じている消費者が旅行関連事業者に求めることは、旅行者の安心・安全を守るために感染防止策としてどのような対策を行っているか、また旅行先の感染状況がどのようになっているか、より具体的な情報が提供されることです。
具体的な対策を実施することはもちろんのこと、対策内容を消費者がきちんと受け取れる形で継続的に高頻度で情報提供していくことが、需要の回復のためにも旅行業界の事業者に求められていることと言えます。」