ブランド総合研究所は15日、「関係人口の意識調査」の結果を発表した。
株式会社ブランド総合研究所は、このたび、地域活性化の“切り札”として注目されている各都道府県の出身者や応援者(ファン、サポーターなど)による「関係人口」の推定人口のほか、移住や訪問、地域貢献につながる意識などを数値化する“日本初”となる「関係人口の意識調査2021」を全国2万人の消費者を対象としてインターネットで実施しました。
出身者や、家族・友人等が居住しているなど都道府県となんらかの関りを持つ人は「関係人口」と呼ばれています。居住人口を増やすことは容易ではなく、また、コロナ禍の影響で交流人口の減少に悩む中で、こうした関係人口を活用する(力を借りる)ことで、新たな地域活性化の可能性は広がります。
本調査では、各都道府県の出身者(居住者を除く)と、応援者(居住者および出身者以外にその都道府県を「応援したい」と思っている人)の両方を「関係人口」としています。
◆最も多いのは福島県で、1229万人。居住人口の6.8倍
最も多いのは福島県で、1229万人となった。これは福島県民(182万人)の6.8倍にあたる。同県の関係人口の特徴は、ボランティア活動や寄付、産品購入などの意欲のある人が多いことだ。次いで多いのは沖縄県で950万人。人口(146万人)の6.5倍と多く、観光意欲がある人は62.2%と全国で最も高いほか、移住意欲も24.5%と全国で2番目に高かった。
3位は北海道の756万人で、人口(523万人)の1.4倍にあたるが、6位の熊本県は人口(173万人)の2.4倍に達しており、この倍率は全国で5番目にあたる。なお、欄外ではあるが人口に対する関係人口の率が福島県、沖縄県に次いで高いのは島根県で3.3倍、次いで鳥取県の2.4倍だった。
居住地以外に出身都道府県があると回答したのは30.4%(現在の居住地と同じ場合は対象外とした)。次に、居住地や出身地以外に「応援したい」と感じる都道府県がある人は55.2%だった。これらの結果をもとに出身者と同様に応援者の人口を推定した(11以下は下部グラフを参照)。
◆親族や友人、観光リピーターが応援理由
「応援したい都道府県とは、どのような関係がありますか(居住や出身地以外)」との質問に関しては、「これまで特に関りがない」または無回答とした人が全体の32.8%を占め、特別な関係がなくても「応援したい」と感じている人が多くいるようだ。
何らかの関係がある人の中で最も多いのは「家族や親せきがいる」が22.7%で、次いで「観光で何度か訪れた」が16.0%だった。「過去に住んでいた」、「友人や知人がいる」などの居住系と、観光系の回答が多い。
観光面で「何度か訪れた」は16.0%であるのに対し、「一度だけ観光で訪れた」は4.6%と少ない。これは一度だけではなく、何度も観光で訪れることにより、「応援したい」という気持ちが高まり、関係人口となることにつながることの表れだろう。
◆関係人口の4割は年1回以上訪問
関係人口のうち、関係している都道府県への訪問状況は「ほとんど毎月」が7.8%、「年に数回程度」が19.8%、「年に1回程度」が13.7%で、計41.3%が年に1回以上の訪問をしている。一方で、「ほとんどない」、「ない」との回答は合計で37.9%もあり、必ずしも定期的な訪問をしているわけではないようだ。
訪問率が最も高い都道府県は埼玉県で、66.1%とおよそ3人に2人が年に1回以上訪問している。次に高いのは大阪府と兵庫県の順。訪問率が10位以内の都府県はすべて関東圏、中京圏、近畿圏に位置しているが、その中で4位の群馬県、6位の静岡県は「ほとんど毎月」の割合が少ない代わりに、「年に数回」の訪問が多くなっている。
◆関係人口の17%が移住意欲あり
関係人口が、関係している都道府県への移住意欲については、「すぐにでも移住したい」が4.9%、「いつかは移住したい」が12.1%で、合計17.0%に移住の意欲がある。この数字を「移住意欲度」とした。
このほかに「住んでもよい」との回答は20.1%を加えた37.1%が移住に対して肯定的な考えを持っており、移住・定住対策として関係人口が重要なステークホルダーであることがわかる。ただし、「あまり思わない」との回答がほぼ同数の35.7%もいることから、必ずしも関係人口が移住・定住につながるわけではない。
◆都道府県の中で、関係人口の移住意欲が最も高いのは福岡県
都道府県の中で、関係人口の移住意欲が最も高いのは福岡県で、「すぐにでも移住したい」が9.5%、「いつかは移住したい」が18.9%で計28.4%が移住意欲がある。
次いで高いのは沖縄県で、「すぐにでも」は5.3%に対し、「いつかは移住したい」が47都道府県中最も多い19.2%もいる。 なお、3位から6位は首都圏および近畿圏の都府県が占めたが、7位に長野県、9位に富山県、10位に静岡県と中部地域の県がランクインしている。
◆旅行、食品、ふるさと納税をしたい人多数
関係人口が関係している都道府県に対して、最もしたいと思う行動は「観光に行きたい」が44.1%。次に「帰省・訪問したい」が27.0%と、観光・交流関係の行動が上位となった(右下図)。年代が高くなるほど観光に行きたいと答える人の割合が高くなっている。
「農林水産品や加工食品を購入したい」は16.0%。北海道や東北と関係がある人が特に希望しており、年齢が高くなるほどその気持ちが強くなる傾向にある。続いて「ふるさと納税をしたい」が14.9%。年代別では20代、30代が40代以上より希望する人が多いという結果になっている。
一方で、「したいことはない」と答えたのは28.8%で、7割以上が地域のためにしたい行動が1つ以上ある。
都道府県別では、地域のためにしたい行動がある人の割合が最も高いのが山形県で83.8%と8割を大きく超えている。都道府県ごとに12の行動の%を合計した「行動指数」でも、山形県は1位となっている。つまり、山形県の関係人口は「地域のために何かしたいと思う人も多く、その行動も多岐にわたっているということになる。
◆全国の関係人口は約1億2千万人と推定
<調査概要>
調査方法 :インターネット調査
調査対象 :登録調査モニター(18歳~79歳)から年代および男女別にほぼ均等に回収
有効回答数:20,508人 (不完全回答等を除いた)
調査時期 :2021年2月17日~2月23日
調査項目 :地域との関係性、定住意欲、移住意欲、訪問状況、観光意欲、地域貢献につながる行動、情報ニーズ、地域の魅力(他に年代や居住地などの回答者属性)