アフターコロナの宿泊市場について考えてみたいと思います。まずは、今回マイクロ飛沫によるエアロゾル感染が大きな恐怖を与えました。つまり、移動手段や行動パターンに関連し個人市場の一層の拡大が予想されます。また、今回様々な後遺症が報告され、人類はウイルス自体の恐怖を深く心に刻むこととなりました。弊社が調査した国内での調査結果では、ストレス環境下等において生じる現象の一つと言われるのですが、心理的時間の進みがやや遅くなっていることも分かりました。また、求められる対人距離を形成するパーソナルスペースが以前よりも長く1.5mとなっていました。このようなウイルスに対する恐怖心から、今後も長期的に、感染リスクレベルに応じた感染症拡大防止対策の継続が求められるはずです。旅行ニーズ調査では、自身の目的を満たしたいという内発的動機付けを背景とするようなニーズが増えていました。現時点ではリスクの観点から慎重な対応が求められるブッフェですが、コロナ禍においても、約過半数から支持されています。地域との連携が見られる場合安心感をも高め、70%以上の回答者がその宿泊施設に行ってみたいと答えています。個々人の旅の目的を明確にし、個人客をしっかりともてなす安全で安心できる宿泊体験こそがこれまで以上に求められるはずです。
また、個人市場向けの対応が急ピッチで求められるはずです。個々の顧客がどのように滞在体験を知覚し認知・認識し態度を形成するのかを追及する視点が重要となります。例えば、顧客の「フロント」に対する評価は「客室」の事前期待へ、また「客室」に対する評価は以降の事前期待に総じて強く影響を与えています。レストランでは「客室」の他、レストラン内の質感等も事前期待を形成し、満足度に影響を与えます。その他前の体験評価が次の体験の事前期待に影響を与える傾向が見られ、前の体験評価値自体が高いほど、次の体験に対する事前期待を強化します。シーン別では、「徐々に評価が上がる」>「徐々に下がる」>「一定」の順を求める傾向があり、その傾向は、「ビジネス目的」<「観光目的」でした。なお、複数日程での旅行工程では、「評価が上がる」>≒「一定」>「評価が下がる」という調査結果でした。一部のシーンだけが良い場合は、それを体験した顧客と体験しない顧客で満足度に大きな違いが生じる可能性もあります。ハードウェア、ソフトウェア、ヒューマンウェアの3要素バランスについてはそれらレベルが同等であることが望まれます。感情を左右する好印象は2回以上で大きく態度とブランド、実体験記憶に影響します。また、1回ミスがあり負の感情を覚えるような場合は大きくそれら効果を減少させます。
総合評価がラグジュアリーホテルクラスでは顧客の共感ゾーンに達することで人ではないホテルについて、その体験を通じて「人」を感じさせ、擬人化して表現する傾向が見られます。つまり人格発現の可能性が高まる他、上記3要素バランス取れている場合においても顧客側に同様の共感が働き、人格発現する可能性が見られ、再来訪に繋がりやすくなります。なお、弊社調べでは人格の年齢層は、スタッフ印象及び建物築年+約10年に近く、宿泊施設は基本女性の質感であることが分かっています。顧客評価上は2要素がバランスし他の1要素が突出しているケースでは顧客評価値>3要素レベルの算術平均値となる確率が高くなり、3要素がバラバラの場合には顧客評価値<3要素レベルの算術平均値となる確率を高めます。
上記のように、アフターコロナにおける宿泊市場では個人市場が中心となるとすれば、顧客の心理面に着目した顧客滞在体験のコーディネートが一層重要な視点となるはずです。
一般社団法人観光品質認証協会 統括理事
㈱サクラクオリティマネジメント 代表取締役
㈱日本ホテルアプレイザル 取締役
不動産鑑定士,MAI,CRE,FRICS 北村 剛史