レストランが提供する食材に関して、どのようなサービス内容や質感があれば、食材に「新鮮さ」を感じるのか調べたことがあります(全国男女200名に対するインターネットアンケート調査、2018年、弊社調べ)。食材が新鮮だと「強く連想する」人の比率が高い順でご紹介しますと、「ホール内が非常に清潔に管理されている場合」が69.5%の人が食材の新鮮さを連想するという結果でした。「食器類や皿、グラスが傷みや汚れがなく非常に清潔に管理されている場合」は同69.5%、「食器類や皿、グラスが傷みや汚れがなく非常に清潔に管理され且つそれらに店側の拘りが感じられる場合」が同67.5%、「提供される料理の温度が適温で提供されている場合」が同56%、「ホールスタッフから、料理提供時に非常に丁寧且つ詳細な食材及び料理説明がある場合」が同52%、「ホールスタッフ等従業員に活気を感じる場合」が同47.5%、「心地よく適温で適切な空調管理がなされている場合」が同44.5%、「顧客で賑わっている場合」が同40.5%、「適切にコーディネートされた生花が見られる場合」同39%という結果でした。このように、空間演出やホールスタッフの振る舞い如何が、顧客側が感じ取る「食材の新鮮さ」に強く影響を与えており、「レストランの品質」を考える際にそれらが非常に重要な要素であるというものでした。
以下では、ポストコロナ時代、より一層、安心して食事を提供する空間造りについて、料理を作った料理人が見えていることの安心感向上効果について、弊社の調査結果をご紹介します(全国男女200名に対するインターネットアンケート調査、2021年3月調査、弊社調べ)。▽まず、料理人が視界に入っている場合の効果を考えてみます。調査の結果、料理人が視界にある場合、安心して食事ができると感じる人の割合は、「強くそう思う」が11%、「そう思う」が20%、「ややそう思う」が19%と合計50%の人が安心できると回答しています。▽また、料理人が視界にあり、且つ料理説明がある場合は、安心して食事ができると感じる人の割合は、「強くそう思う」が12%、「そう思う」が20%、「ややそう思う」が27%と合計59%の人が安心できると回答しており、効果が一層向上しています。▽次いで、安心できることが味覚へ影響している可能性も考えられます。料理人が視界にある場合、美味しいと感じるような気がするかという問いに対して、「強くそう思う」が9%、「そう思う」が16%、「ややそう思う」が25%と合計50%の人が美味しいと感じるような気がすると回答しています。▽また、料理人が視界にあり、且つ料理説明がある場合は、美味しいと感じるような気がするかという問いに対して、「強くそう思う」が10.5%、「そう思う」が19.5%、「ややそう思う」が29%と合計59%の人が美味しいと感じるような気がすると回答しています。
さらに、最初の「安心感向上効果」の調査結果と、「味覚影響効果」との関係を見てみます。料理人が視界にあり、安心すると回答する人と美味しいと感じるような気がすると回答している人の関係性について、相関係数を使用し見てみます。相関係数とは、二つのデータ群の関係性を示すもので、その値が0~0.3未満であればほぼ無関係、0.3~0.5未満であれば非常に弱い相関、0.5~0.7未満で相関あり、0.7~0.9未満で強い相関があると言われています。料理人が視界にある場合、安心感向上効果と味覚向上効果の相関係数は約0.73という結果であり、また料理人が視界にあり且つ料理説明が行われる場合、安心感向上効果と味覚向上効果の相関係数は約0.82という結果でした。つまり、「安心感を覚える」ことは「美味しいと感じる」という味覚にも影響している可能性があります。また料理人が視界にあり、さらに料理人から料理説明がある場合では、その効果は一層高くなっています。「安心感」は様々な体験知覚の原点であり、個人宿泊市場における様々なシーンコーディネートにおいて、一層重要な概念となるものと考えられます。
一般社団法人観光品質認証協会 統括理事
㈱サクラクオリティマネジメント 代表取締役
㈱日本ホテルアプレイザル 取締役
不動産鑑定士,MAI,CRE,FRICS 北村 剛史