【マンスリーリポート 観光の現場 流れを読む 18】今年の春節、訪日客の動きは


外国人客でにぎわう東京・浅草の仲見世通り

 旧暦の正月「春節」。今年は2月16日が開始日で、中華圏は15~21日などが連休となった。この期間、650万人の中国人が海外旅行に出掛けるとの予測もあり、日本の観光地も例年以上のにぎわいが期待された。各地の状況はどうだったか。旅館経営者らに聞いた。

 「外国のお客さまが増え、フロントでパスポートをコピーする手間が大変だった」。こう話すのは大分県のある温泉旅館経営者。もともと香港や韓国からの宿泊客が多かったが、「今年の春節はさらに増えたと実感している」。連泊が増えたのも特徴で、「みんなが行く観光コースは人が多すぎるので敬遠しているのでは。いずれにしても都市から地方へ、外国のお客さまが確実に流れている」。

 大分県の別の旅館経営者は「1月から2月にかけてはオフ期だが、外客増でオン期並みの入り込みになっている。昨年からの傾向だが、今年も増加基調で推移している」。国籍別では「韓国からの個人客は変わらず好調に推移。台湾は団体が定期チャーター便のストップで減少傾向だが、全体としては昨年よりも増加傾向」という。個人客はほぼOTA(オンライン・トラベル・エージェント)経由の予約だ。

 新潟県のある温泉旅館は、今年の春節期間中、香港と台湾からの延べ宿泊客数が前年比193%とほぼ倍増した。「スキー、スノーボード目的か、雪を見に来る方が多い」という。

 新潟県の別の温泉旅館経営者は、「スキーシーズンはオーストラリアなど欧米豪系が多いが、春節はアジア系のお客さまが増える。中国本土よりも香港、シンガポール、マレーシアのお客さまが目立つ」。

 「ここ数年、春節がらみのツアー団体を受け入れているが、今年も連日バス1台から2台のお客さまを受け入れている」という岡山県の温泉旅館経営者は、例年とのある違いを指摘する。

 「数は例年通りだが、昨年までは間際での問い合わせが多かったのに、今年はそうでもなかった。大阪地区の(客室の)需給が落ち着き、客室の手配が容易になったためではないか」と分析する。

 都市近郊の温泉・観光地の旅館・ホテルからは、例年と大きな差は見られないとの声が多く聞かれた。「特筆できる動きはない。市内にツアーバスが入り込んでいる様子もない」(千葉県)、「増えたような印象はなく、いつもと変わらない」(兵庫県)、「大きな動きはなく、当館では台湾、香港の方が例年通りの宿泊という状況」(宮城県)。

 神奈川県の小規模ホテル経営者も「春節の動きに大きな変化は見られない」と指摘。ただ、外国人客の増加を見込んだ新たな競争相手の出現に危機感を抱いている。

 「近くに『○○ゲストハウス』『ゲストハウス○○』という名称の小規模宿泊施設が増えている。ゲストハウスのオーナーのほとんどは外来者で、空き家を安く買い取って、素泊まり3千円ほどで泊めて小宿のお客さまを横取りしている現状だ。地元の自治会や観光協会に加盟していないので、営業許可を受けているかなど実態はよく分からない」。
 外客受け入れに積極的なある旅館経営者は「いまだ真剣に外客の受け入れに取り組んでいない施設もあり、その本気度、スキルの習熟度で入り込みの印象がかなり違ってくるのでは」とも指摘している。

【森田淳】

 
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