
日本旅館協会関西相談役 岡本厚氏
大阪・関西万博が開幕した。今回の万博は観光にどんなレガシーを残せるのか。関西各府県・旅館業界の取り組みや思いをリレー形式で紹介する。3回目は大阪府。吉村洋文知事と岡本厚氏にそれぞれお話を伺った。(聞き手は本社関西支局長・小林茉莉)
チケット販売等、要請あれば連携・協力
――万博期間中の宿泊について、予約や問い合わせ状況は。
「大阪市の中心部については、昨年の時点ですでに満室という施設もあるなど混みあっている。ただし万博開催にかかわらず、大阪中心部はインバウンド需要の高まりで予約が取りにくくなっているので、万博需要をどれだけ取り込めているかは分からない」
「府内北部の池田にある私の宿の場合、6月あたりは前年の2倍ほどの予約が入ってきていて、少し万博需要が見えてきた感じはある。今までに来たことのない学校の修学旅行の予約などもぽつぽつ入ってきている。だが地方からバスを利用して来るような団体客の動きは少なく、期待していたほどではないというのが正直なところだ。とはいえ、5月の連休ごろからはバタバタし始めるのではないだろうか」
――万博に向けた取り組みなどは。
「昨年の早い段階で、大阪府内の旅館ホテルでは、旅館ホテル組合が購入して配布した名入りのミャクミャク人形を飾るなどして雰囲気づくりに努めてきた。万博自体を知らないとお客さまに見どころをおすすめすることもできないので、組合でチケットを購入し、各旅館ホテルに研修用として配っている」
「最近になってようやく情報が出てくるようになったが、やはり万博自体の情報が不足している。どうやって予約するのかはもちろん、どこで何が見られてどこで食事がとれるのかなど、まだまだ見えない。旅行会社との連携を図りたくとも、旅行会社も食事場所の予約ができずに苦労しているようだ」
――大阪に宿泊する魅力はどこにあるか。
「やはり大阪市周辺の食の魅力が一番大きいのではないか。安くておいしいB級グルメがたくさんあるし、それ以外のバリエーションも豊富だ。生産、流通量が少なくて知られていない、おいしい農産品や大阪湾で取れた魚などは、大阪に泊まらなければ食べられない」
「府内には、南部の犬鳴山温泉はじめ、北摂エリアなどに温泉旅館もあり、大阪市からアクセスも良いのが売りだ。ランチや温泉利用などの需要もある。中心部のホテルに滞在している人には、万博を契機に、自然豊かな大阪の温泉はじめ、さまざまな魅力ある府内の旅館を利用してほしい」
――万博に向けた意気込みなどを。
「難しいかもしれないが、旅館ホテルでチケットなどを売ることができれば、『やっぱり追加で万博に行こう』『もう一度大阪に来て万博を見よう』といったニーズも掘り起こせるように思う。万博協会や府市からの協力要請があれば、旅館協会としても積極的に協力して盛り上げていきたい」
(3月25日、不死王閣で)
日本旅館協会関西相談役 岡本厚氏