緊急事態宣言が発令されているにもかかわらず、オリンピックの開会式を含めた7月22日から25日までの4連休期間、多くの人が国内線や新幹線を利用して旅行に出掛ける光景が見られた。私も7月22日の連休初日の午前中に羽田空港と東京駅で利用者の流れを取材していたが、今までの緊急事態宣言中では最も多くの利用者であるように感じた。今までは、緊急事態宣言が発令されることで新規の予約数以上にキャンセル数が大きく上回る状態が続いていたが、ANAによると7月12日に緊急事態宣言が発令された以降も、キャンセルよりも新規予約の方が上回るという事態になったそうだ。
羽田空港で各社の発着案内版を確認すると、午前中に出発するほとんどの便が空席わずか、もしくは満席の表示となっていた。また、東京駅においても例年に比べると利用者の数は少ないが、東北、北海道新幹線「はやぶさ」や北陸新幹線「かがやき」、また東海道新幹線も「ひかり」の一部の指定席が満席表示となっていた。まだ、全体的には2年前と比べると約半分程度の利用者の戻りにとどまっているが、緊急事態宣言中にしても異例の利用者数だ。
背景としては、緊急事態宣言によって東京オリンピックも無観客となり、首都圏でのパブリックビューイングも開催されないことで、東京にいてもオリンピックの雰囲気も楽しめないことがある。さらに飲食店における酒の提供も終日見合わせや交通規制なども含めて、窮屈な東京を脱出して旅行に出掛ける人も多かったようだ。
航空券の価格においては、お盆期間中に比べると割安の水準になっていることもあり、この4連休を使ってすでにワクチン接種を終えた両親がいる故郷に家族で帰省する動きも見られた。ワクチンの接種を終えていない場合でも、東京を出発する前に2千円程度で受けられるPCR検査をしてから飛行機や新幹線を利用する人が多かったのも印象的であり、東京都内の感染者が急上昇している中でも、キャンセルの動きは今まで以上に限定的であった。オリンピックが開催され、関係者が県をまたいで移動をしていることも自粛要請の効果の薄い要因だ。面白い傾向としては、東京オリンピックの観戦チケットが払い戻しされることになったことで、その分のお金を使って国内旅行へ出掛けるという動きもあった。
オリンピックのテレビ観戦は、旅行に出掛けていてもどこでも見られるということで、夏休み期間中唯一の4連休はコロナ対策をしながらも旅行に出掛ける人が多かったようだ。
(航空・旅行アナリスト、帝京大学非常勤講師)