成田空港は1978年(昭和53年)5月20日に開港して今年で44年がたった。開港直後からは国際線のほとんどが成田空港から出発し、日本と世界をつなぐゲートウェイの空港であった。2012年夏に国内線LCCが誕生して以降は国内線も増えたが、世界を代表する空港の一つとなっている。海外旅行に出掛けた人のほとんどが利用している成田空港であるが、開港から44年がたって初めて4千メートルのA滑走路を歩くことができるイベント「成田空港滑走路横断スペシャルバスツアー」が5月21日(土)の早朝に実施された。
定員は40人で、抽選の中から選ばれた人が参加。最終的な倍率は17・7倍となった。今回のツアーでは、「スカイバス」のオープントップのバスが使用された。私も取材で参加者とは異なるメディア用の通常バスに乗車して、A滑走路の滑走路ウォークを実際に体験してきたが、国際空港の滑走路を歩くこと自体が画期的なことであった。24時間空港であれば基本的には難しい中、午前6時から運用開始になるということで、午前3時半集合で4時半前に滑走路に足を踏み入れられた。
バスが滑走路上に停車し、足を踏み入れた瞬間、鳥肌が立つような感動があった。参加者が最初に驚いたのは横幅の広さであった。飛行機が離着陸する滑走路の大きさを目の当たりにしたほか、車が走る道路と表面が異なり、滑り止めの窪みも間近で見られた。滑走路上では、記念撮影する姿、中にはジャンプしながら写真を撮っている参加者の光景も見られたが、私自身は、一度でいいので滑走路で横になってみたいという夢があったが、今回成田空港で実現することになった。まさに、いつも使っている空港でこのような体験ができたのは、コロナ禍でさまざまなアイデアを出すなかで生まれたスペシャルツアーであり、コロナ禍でなければ実施されなかった可能性も高い。
ツアー料金は、滑走路ウォーク以外に着陸を間近で見たり、普段は立ち入ることができない「ランプセントラルタワー」への入場も含めて2名参加で、1人あたり3万5千円(1名参加時は4万円)だったが、滑走路に落とし物がないかのチェックや警備員などコストも考えると決してもうかる企画ではないと推測している。成田国際空港会社では成田空港のファンになってほしいというメッセージが込められているとのことで、今回のツアーの状況を踏まえ、次回は未定ながらも今後も実施していきたいとのことだ。
まさに大人も子どもも楽しめる企画で、ヒット商品間違いなしだろう。
(航空・旅行アナリスト、帝京大学非常勤講師)