6月12日に東京スカイツリーの地上350メートルの天望デッキでANA、JR東海、JAL、JR東日本、東京メトロの5社が集まり、地方から東京への旅行者が久しぶりに東京へ「ただいま」という、帰ってきたような気持ちで旅行に来てもらえることを目指した共同キャンペーン「ただいま東京」をスタートさせた。
JR東海が各社に声掛けして実現し、主に各社がキャンペーン用のTwitterやインスタグラムなどで東京の魅力を発信していくほか、東京に遊びに来た観光客などがハッシュタグ「#ただいま東京」を入れて投稿することで、航空券や旅行商品、ホテル、旅行券などが当たるキャンペーンを実施する。
この取り組みを実施した背景としては、東京から全国各地へ旅行に出掛ける人が増えている一方、地方から東京への旅行の戻りが鈍いという状況がある。双方向での需要が戻らないことには、コロナ前の利用者数には戻らないという危機感がある。JR東海によると、2018年比でJR東海の旅行商品において全体で60%の戻りであるが、東京着の商品は46%しか戻っていないなど、新型コロナウイルスに対して警戒心が強い地方からの東京への旅行の戻りは限定的になっている。
このような状況の中で、東京都の感染者数がこの1カ月間ずっと減少傾向に転じたことに加え、これまで全国で唯一、都道府県単位の割引をしていなかった割引も都民割「もっとTokyo」が6月10日から再開したことも大きい。都民以外は割引を使えないが、東京へ旅行することに大きな問題がない一つのメッセージと受け取っている人も多い。
旅行以上に出張需要や単身赴任先との往復などビジネス関連の国内移動はほぼ戻りつつあり、筆者も直近に大阪と名古屋を訪れたが、飛行機や新幹線も混雑しており、肌感覚で言えば週末はコロナ前の水準に戻ってきているように感じるくらいだ。地方でも若い世代は最近になって久しぶりの東京を楽しむ姿も多く見られ、東京ディズニーランドや東京ディズニーシー帰りに大きなお土産を持った人も東京駅などで見られるようになった。
ただ、シニア層については都市部から地方への旅行は戻りつつあるが、地方から東京への旅行はまだまだ少ない。これから夏の本格的な旅行シーズンに入るが、まだまだ訪日外国人観光客(インバウンド)の需要は限られ、東京都内のビジネスホテルはまだまだ安い。
この夏、地方から東京への旅行需要がどのくらい戻るのか注目していきたい。
(航空・旅行アナリスト、帝京大学非常勤講師)