【交通トレンド分析167】ダイナミックプライス、国内線と新幹線で比較 鳥海高太朗


 全国旅行支援が10月11日に始まった。11日以降、ニュースをにぎわせているのが「便乗値上げ」という言葉で、宿泊施設の価格が高騰しており、全国旅行支援に乗じた便乗値上げではないかという声がある。業界の人間や旅行好き、出張が多い人にとっては需要と供給に応じてリアルタイムで価格が上下する「ダイナミックプライシング」の流れであることは理解してもらえるが、旅行にあまり出掛けない人にとっては値上げと感じてしまっており、一部のSNSで盛り上がったことでニュース番組でも取り上げられるといった状況となっている。

 ただ、今回は需要が高まれば価格が上がることは当然という擁護の声も大きい。一定の層にはダイナミックプライシングが浸透しているということが分かった。私もテレビなどでコメントする機会が多いが、国内移動で考えてみると、飛行機はダイナミックプライシングを積極的に活用しているが、新幹線はダイナミックプライシングを採用していないという点である。

 ANAやJALなどの国内線においては、ダイナミックプライシングを近年、積極的に導入している。例えば羽田空港から大阪の伊丹空港へ向かう場合、前日まで購入可能な特定便割引でも便によっては1万1千円前後で購入できる便もある一方、混雑していれば2万円を超えることもあるなど、ダイナミックプライシングを採用し、便によって、さらに購入のタイミング次第で同じ運賃でも上下幅がある形になっている。

 一方、東海道新幹線においては「のぞみ」指定席利用で1万4720円、自由席利用で1万3870円となっている。繁忙期や閑散期にそれぞれ200円前後するが、国内線の飛行機に比べるとほぼ変わらない料金設定となっている。「エクスプレス予約」(要会員登録)では普通車は1万3620円と1年中同じ料金設定だ。国内線も普通運賃は存在しているが、普通運賃で利用する人は限られており、実態で考えると新幹線は年間ほぼ同一価格、国内線は上下幅が激しいということになる。

 宿泊施設においては、東横インなど一部のビジネスホテルチェーン、宿泊施設で年間ほぼ変わらない金額で設定しているところもあるが(繁忙期は非常に割安感を感じる)、宿泊施設の多くは現在ダイナミックプライシングを採用している。

 今後、JRも一部路線で繁忙期料金を引き上げる動きはあるが、列車ごとに運賃が変わることはしばらくなく、同じ区間でも飛行機が安い時と新幹線が安い時の両方がある現在の状況は続きそうだ。

 (航空・旅行アナリスト、帝京大学非常勤講師)

 
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