年末年始、国内各空港では、保安検査場に長い行列ができていた。特に羽田・成田・関西の国際線保安検査場においては、通過に30分から1時間掛かることも珍しくなかった。人を増やして対応すれば良いのではないかという声もあるが、現場としては、保安検査の機器はあるが、急激な旅客需要の回復によってコロナ禍で減らしていた保安検査員を確保することができず、すべてのレーンをフル活用できなかったことが原因となっている。もちろん、ハイジャック防止も含め、保安検査に手を抜くことはできず、抜本的に解決することが難しい状況になっている。特に国際線は2年半近く、海外からのインバウンド需要が止まってしまったことにより退職が相次ぎ、他の業種に転職をしてしまい、新たな人員の確保に苦戦している。
元々、コロナ前から人員不足はいわれていたが、昨年10月に入国制限が緩和後のインバウンドの急回復に追い付けず、現在の状況にある。保安検査員になるためにはしっかりとした研修を受ける必要があり、雇用ができても現場に投入するまでには一定の時間を要する。賃金も決して高くないのも雇用に苦労している要因の一つだ。長い行列が常態化することでインバウンドにおいても悪影響が出かねず、航空会社、空港会社を含めて対策を考えなければならない時期に来ている。
その中で注目されているのが最新鋭の保安検査の機器である。羽田空港第3ターミナルビルでは、「CT(Computed Tomography)型機内持込手荷物検査用X線検査装置」を導入している。従来のX線よりも高い検知能力を有することで迅速にチェックをすることで、荷物1個当たりの検査時間の短縮につながる。国内線でも一部の保安検査において、パソコンや液体物を鞄から取り出さずに検査できる機器を導入するなど人手不足に対応する努力はしている。しかしながら、それ以上に人員不足であり、そろそろ国全体として抜本的な解決方法を考えなければいけない時期に来ていることは間違いない。
保安検査場が混雑していることで、チェックイン後に搭乗時刻までに搭乗ゲートに到達できない事態も発生している。また羽田空港第3ターミナルでは、マイレージの上級会員やファーストクラス利用者などは専用の優先レーンを使うことがコロナ前はできたが、現状、優先レーンの運用は停止したままで不満の声が聞かれている。
国際競争力の観点からも保安検査場混雑は早急に解決しなければならない課題である。
(航空・旅行アナリスト、帝京大学非常勤講師)