【交通トレンド分析182】空港保安検査場の混雑、人手不足が大きな原因 鳥海高太朗


 今年に入ってから慢性的に国内各空港の保安検査場で長い行列を見ることが増えている。今までであれば、年末年始、ゴールデンウイーク、夏休み、3連休中などで、国内線では羽田空港をはじめ伊丹、新千歳、福岡、那覇などの主要空港、国際線では羽田、成田、関西などの各空港で長い行列が見られたが、最近では平日でも発着便が多い時間帯を中心に保安検査場前に長い行列ができている。

 羽田空港の国内線では、JALは第1ターミナルに南ウイング・北ウイング各2カ所ずつ、ANAは第2ターミナルに4カ所の保安検査場があるが、人手不足を理由に第2ターミナルは保安検査場「D」においては、繁忙期以外は閉鎖が続いている。それ以外にも保安検査場自体は開いているが、人手が足りないことから利用できるレーンを制限している空港が目立つ。これが行列が長くなっている一番の要因である。保安検査場の機械はあるが、人員不足によって全てのレーンをオープンすることができないのだ。特に国内線ではコロナ前の水準近くまで戻っているが、人員不足によって同じ乗客数でも行列が長くなってしまうのはこのような理由からである。

 コロナ禍で2年以上も厳しい状況が続いた航空業界では、利用者が激減したことで保安検査場の人員を減らしてしまい、他業種に転職した人も多く見られた。勤務時間が短くなったことで給与が減ってしまい、転職せざるを得なかった人も多いと聞く。宿泊業界の人手不足も同様であるが、いざ需要が回復しても、新規雇用が難しい状況がある。さらに保安検査業務は、飛行機の安全を守る重要な任務であり、しっかり研修を受けた上で現場に投入されることになるが、空港によっては勤務時間も不規則であり、さらに賃金も決して高くないことから新規雇用のハードルがより高くなっている。ある地方空港関係者は、地方空港においても人手不足が続いており、回復基調にある国際線を受け入れるにあたって、保安検査場の人員確保ができないと国際線の受け入れができないという地方空港もあるとのことだ。

 利用者としては、この問題が解決するまでは空港に従来よりも早めに到着するのが望ましいだろう。場合によっては通過に15~30分程度かかることもある。羽田空港や新千歳空港、福岡空港など複数の保安検査場がある空港においては、少しでも空いている保安検査場を見つけて利用することで少しでも混雑を回避できる。

 定時性を確保する上でも早い解決が求められるが、もう少し時間がかかることになりそうだ。

 (航空・旅行アナリスト、帝京大学非常勤講師)

 
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