台風19号の影響で北陸新幹線の長野駅近くの車両基地「新幹線車両センター」が浸水したことにより、北陸新幹線は約2週間にわたって一部区間が運転見合わせとなった。そのため、新幹線で東京から富山や金沢方面への足が分断された。その際に久しぶりに注目されたのが羽田―富山までの航空路線だった。
2015年の北陸新幹線開業によって、東京駅から富山駅までが約2時間で結ばれ、昔ならばその時点で飛行機路線が廃止される可能性が高かったが、富山県の路線存続への思いや、急増する訪日外国人の羽田空港での乗り継ぎ需要もあることから、便数を減らし、機材も小型化することで現在も存続されている。
新幹線が不通になって以降、すぐに飛行機にたくさんの人がシフト。この路線を運航するANAも機材の大型化や臨時便を飛ばすなどして対応し、多くの利用客が飛行機を利用することになった。過去にもあるが、災害で新幹線が長期間不通になってしまうと飛行機が重要な役割を果たすことになるが、今回もそのケースに当てはまるだろう。
「4時間の壁」という言葉があるように、4時間前後が飛行機と新幹線を選ぶ人が五分五分になると言われている。2時間ともなれば、通常は飛行機の路線がなくなってしまうわけだが、やはり昔から飛行機に乗り慣れている人、特に車で空港に行く人にとっては駐車場も完備されてスムーズに飛行機に乗れることで、新幹線を利用しないで飛行機を利用するという層が一定数いる。
実際に、災害に関係なく今でもANAやJALが飛ばしている羽田―小松までの路線も固定客がたくさんおり、新幹線開業後に若干機材を小さくしているものの、安定した集客が続いている。似たようなケースとしては、1日2便のみであるが羽田空港から山形空港へのJAL便も安定した利用者がいる。
このように距離は短い国内線路線は、観光においても重要な役目を果たす。特に羽田空港国際化で国際線で羽田空港に到着後、そのまま地方に乗り継げるメリットがあり、海外から羽田乗り継ぎで富山に飛び、飛騨高山などを観光する外国人観光客も多い。そういった意味でも便数が少なくても、羽田からの路線を残すということが重要であり、大きな意味がある。
加えて今回のような災害が起こったときにすぐに対応できるというリスク分散という役割も果たしており、路線を維持するためにも、やはり地域の人たちが日頃から積極的に飛行機を使うことも重要であることを改めて今回の災害で知ることになった。
(航空・旅行アナリスト、帝京大学非常勤講師)