【交通トレンド分析52】飛行機のソーシャルディスタンス 航空・旅行アナリスト 鳥海高太朗


 新型コロナウイルスの発生後から使われ始めた言葉に「ソーシャルディスタンス」がある。日常的な距離という意味になるが、公共交通機関でも隣の人との間隔を取るソーシャルディスタンスを実践するケースが増えてきている。

 航空会社でも隣に連続して座らないように、一部座席を事前座席指定できないようにする取り組みが始まっている。

 JALでは国内線では4月29日から6月30日まで、国際線では5月10日から6月30日までの期間、3人掛けの座席では窓側と通路側のみ指定可能で、真ん中の席は座席指定できないようになっているほか、2人掛けの座席では窓側のみ座席指定が可能で通路側は座席指定不可となっている。さらに大型機の真ん中の4人掛けは通路側のみ座席指定が可能で真ん中2席は座席指定不可になっている。

 本来、ソーシャルディスタンスと言えば2メートルの距離を取ることを推進しているが、一部の座席を指定不可にしても、機内で隣の人と2メートル以上の間隔を取ることは簡単ではない。ガラガラであれば事前座席指定のシートマップ画面で周辺に座席指定されていない席を選べば2メートル以上離れたソーシャルディスタンスが可能となるが、予約が多くなってくると、3人掛けの席で真ん中の1席しか空席がなければ、人と人の距離が約50センチ程度になってしまう。そうなると2メートルのソーシャルディスタンスを確保することはできない。ここが飛行機の難しいところである。

 採算性の意味でも7割以上の搭乗率、LCCであれば8割以上の搭乗率を確保したいところであるが、使える座席が少なくなってしまうことで搭乗率が下がり、必然的に運賃を上げざるを得なくなってしまう可能性もある。

 国際線であれば最新鋭の1人掛けのビジネスクラスを利用することで、ソーシャルディスタンスを確保することができるので、企業の海外出張においては社員を守る意味でも今までエコノミークラスで移動していた出張者がビジネスクラスに変わることも十分に考えられるだろう。だが、実際問題としては利用者が回復する傾向が見られれば、収益的にエコノミークラスの隣のシートを空席にする運用は難しいだろう。

 それよりも飛行機に搭乗する前に1人ずつ体温計を使った検温を実施し、少しでも疑わしい状況であれば搭乗自粛もしくは航空会社側で搭乗を断るといった運用も必要だろう。

 ベストなのは早くソーシャルを考えずに乗り物を利用できる状況になることだがまだ先にはしばらく見えてこないだろう。

 (航空・旅行アナリスト、帝京大学非常勤講師)

 
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