東京駅と成田空港を片道千円で利用できる格安バス「エアポートバス東京・成田」が3月1日から値上げになり、新料金は片道1200円となる。今回の値上げは、新型コロナウイルスの影響で成田空港利用者が大きく減少し、バスの乗車率が下がったことが値上げに踏み切った大きな要因だろう。
東京駅と成田空港を結ぶ格安バスは、2012年夏に成田空港拠点の国内線LCC便が運航を開始したことで運行を開始した。片道千円で利用できることから「千円バス」とも呼ばれていた。当初は京成バスがメインとなる「東京シャトル」、千葉県内にあるバス会社ビィー・トランセグループ、その後、JRバス関東も共同運行に加わった「THEアクセス成田」の二つのバスがあったが、2020年2月に二つのブランドが統合し、「エアポートバス東京・成田」に生まれ変わり、日中時間帯はほぼ10分に1本の運転本数となった。そのうち1時間に1本程度は事前予約者専用のバスと予約なしで利用できるバスの2本が同じ時間に発車することもあるなど、一時は国際線が成田空港から羽田空港へ移管したことで便数が減少傾向にあったが、訪日外国人観光客の増加により、海外のLCCも含めて大幅増便になったことで10分に1本の運転本数でも満席で発車するバスが非常に多かった。
しかし、入国制限によって外国人観光客の入国がほとんどなくなったことによりバスの利用者の中心は都内に在住する空港勤務者や一部の国内線LCC利用者に限られ、4、5月の緊急事態宣言中は1時間に1本程度にまで本数を縮小し、国内線LCCの便が回復傾向になったことで、2021年2月現在では30分に1本程度の運転本数となっている。
東京駅からノンストップで約1時間で成田空港に到着するという利便性から利用者は順調に伸びた。特に国内線のLCC(格安航空会社)が発着する第3ターミナルにおいては、鉄道駅がないことからさらに重宝されることになった。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大によって空港は閑散としてしまった。それでもジェットスター・ジャパン(第3ターミナル)やピーチ(2020年10月末より第3ターミナルから第1ターミナルに移転)の一部国内線が運航していることが救いとなっている。格安バスにおいては LCCと同様のビジネスモデルであり、1席あたりの利益は少ないことから平均で8割以上の乗車率が求められる。そういった点からも今回の200円の値上げは路線維持の上では必要な値上げと言っていいだろう。
(航空・旅行アナリスト、帝京大学非常勤講師)