【交通トレンド分析91】東日本大震災から10年、大きく変わった仙台空港 航空・旅行アナリスト 鳥海高太朗


 東日本大震災から10年となった2021年3月11日の14時46分、私は仙台空港の出発ロビーで館内アナウンスに合わせ、震災で亡くなられた方に対して1分間黙祷した。2011年3月11日、仙台空港は震度6弱を記録し、大津波警報が発令され、地震発生から約70分後に津波が押し寄せた。津波の高さは3・02メートルに及んだそうだ。津波の様子はテレビで見ていたが、言葉を失ったという記憶が鮮明に残っている。私は記者という立場で震災から33日後の2011年4月13日、空港ターミナル内の大部分が損傷しほとんどが立ち入り禁止となっている中で、暫定的な出発、到着エリアを整備して仙台空港は運航再開したが、羽田発仙台行き臨時便の初便に搭乗し、震災後初めて仙台空港に入った。

 到着後に外へ出て、タクシーを手配し、約30分間空港周辺を走ってもらったが、空港周辺は家屋が倒壊したままでがれきが散乱し、自動車も船も乗り上げていた。橋も大きく損傷し、日本ではないような光景で、ここまで日常の生活が失われてしまうのかということを見せつけられた。その後も取材などで度々訪れていたが、10年がたった今、心の傷は癒えないが、震災がなかったかのような日常を取り戻している。

 仙台空港は2016年7月に東急電鉄を中心とするコンソーシアムが運営を開始した。そして翌年2017年にはLCCのピーチが従来から運航していた仙台―関西線に続いて、仙台―新千歳線、仙台―台北線を就航し、仙台空港を拠点空港の一つにすることに成功し、仙台―那覇線も含めてピーチだけで4路線体制となった。加えて、海外のLCCをはじめ、国際線の新規路線の誘致を積極的に進め、2019年度には371万人の利用者を記録した。仙台空港はJR仙台駅と「仙台空港アクセス線」で乗り換えなしでアクセスできるが、仙台空港を宮城県の玄関口ではなく、東北全体の玄関口という位置づけにして、空港からのバス路線網を整備した。宮城県内では松島、福島県方面では相馬、福島、二本松、会津若松、山形県方面では山形駅、鶴岡、酒田などへ乗り換えなしでアクセスできるバスを運行している(一部路線はコロナの影響で運休している)。岩手県、秋田県、青森県も含めて仙台空港のホームページにはアクセス方法も案内されているなど、まさに利用者ファーストでの空港運営をしている。

 震災から10年となったが、民営化された仙台空港はコロナが収束したあと、再び訪日外国人観光客でにぎわう姿が見られることを期待したい。

 (航空・旅行アナリスト、帝京大学非常勤講師)

 
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