【令和時代における交通インフラの人材採用38】宣言明け、バス会社の対応 女性バス運転手協会代表理事 中嶋美恵


 国内の緊急事態宣言が解除され、徐々に自粛体制が緩和されています。しかし、さすがは生真面目な日本人。強制体制でなくなっても自主的に安全への注意を怠らない姿勢は素晴らしいと改めて感じるところです。Beforeコロナに再び戻ることはないのだと誰もが自身に言い聞かせる中、それでもできれば以前の状態に戻ってほしい、と日々願わずにいられない複雑な心情です。コロナの第2、第3波や第2、第3のコロナを警戒することも避けては通れないのが本当につらいところですが、やはり観光業界も運輸業界のその影響、衝撃は特に大きく、厳しい経営判断や難しいかじ取りが求められていることは言うまでもありません。

 バスの運転手は安全に目的地まで乗客を送り届けるのが仕事です。安全運転できることが大前提ですが、最近では乗客への対応も重視されており、採用の際にはコミュニケーション能力も重要な審査基準になっています。実際、バス運転手にインタビューすると「お客さまからありがとう! 助かりました! と言ってもらえるのがやりがいです」と答える方が多いのです。であるにもかかわらず、このコロナ禍で乗降客が激減。「やはり、乗客の少ないバス、乗客のいないバスを運転するのはつらいですね」と言う路線バス運転手の声も多数聞かれました。

 航空機のパイロットにはコクピット、電車の運転士には運転室があり、乗客との直接的接触はないものの感染リスクは抑えられています。タクシー運転手は透明のシートの活用や換気対策などを行うとはいえ感染リスクは否めませんが、一度に触れ合う乗客は数名です。一方、バス運転手は不特定多数の乗客と直接コミュニケーションを取ることが運転手にとっても乗客にとっても良いとされている職業。であるにもかかわらず、今回の新型コロナウイルスの影響で、運輸の旅客系の中で最も高い感染リスクを抱えた職種となってしまったのです。バス事業者各社は経費削減の中、自社のバス車両に直接接触のリスクを避ける対策として、透明のシートを取り付けるなど可能な限りの努力をしています。が、根本的解決には至っていないのが実情です。

 仕事とは、もちろんお金を稼ぐことも重要な目的ですが、ただそれだけではありません。バス運転手が、本来のやりがいをもって楽しく充実した業務が行える状態になることを願わずにはいられません。

 (リッツMC代表取締役社長兼女性バス運転手協会代表理事)

 
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