【体験型観光が日本を変える 131】人としての原点揺らぐ虐待 体験教育企画社長 藤澤安良


 かんぽ生命の不正取引が増え続けて、全容が明らかになっていない中にあって、その件数は18万件に及んでいる。「気付かなかった」では済まされない事態であり、組織ぐるみと言われても言い逃れできない状況である。郵政民営化は何をもたらしたのか、問われかねない。

 少子化の中で子どもは国の宝と言われながら、子どもの人口(15歳未満)は減り続け1571万人となった。ペットは1855万匹と増え続け、子育てよりも動物を飼う人の方が多いのは釈然としない。

 児童虐待件数が発表され、児童相談所が対応しただけで、15万9850件となり、28年連続して増加した。DVや暴言、身体的虐待や育児放棄、あるいは性的虐待など、おおよそしつけの域を逸脱している。

 来年4月から体罰を禁止する改正児童虐待防止法と改正児童福祉法が施行される。体罰に頼らない子育て方法を習得しなければならない。

 3世代が同居していた時代から核家族化が進み、子育ての体験が次世代に伝わらないことも要因にあるだろうし、貧困や人間関係などのストレスも原因になる。

 法改正だけで解決する問題ではない。根本的な原因除去に対応する政策が必要であり、それに動き出さなければ、これらはなくならない。親子がなぜ虐待したり殺し合わなければならないのか。人間としての原点が揺らいでいる。

 大人がしっかりしなければわが国の未来は危うい。子どもはどうか。高校生の一団10人が通勤客がいない日曜日の2両編成の電車に乗ってきた。同じ部活の仲間であるが、隣にいるのに誰一人その仲間と話をしていない。全員スマホをいじっているではないか。一体どういう場面で会話をするのであろうか。部活とは、仲間とは何でつながっているのだろうか。不思議な時代になった。親子も家族も学校もコミュニケーションが少なすぎる。人間関係が希薄になる一方である。

 過日、WHOがゲーム障害を病気と認定する話題に触れたが、このような日本の状況はスマホ依存症であり、スマホ障害という病気が認定されてもいいような事態に陥っている。

 家族旅行や体験活動ではゲームやスマホはなくてもよい。むしろないほうが良い。文字や記号でやり取りするより、直接話せばよい。会話でのコミュニケーションは人間に与えられた高度な能力であるが、使わなければ退化するのではと心配になる。

 さらには体験プログラムやスポーツアクティビティはゲームやスマホのようなバーチャルな世界ではなく、真実の世界であり、それらの体験は人生経験として刻まれ、いつか役に立つものとなり、はるかに凌駕する。

 夏休み真っただ中である。暑い日が続いており、周到なる熱中症対策をとり、人間力回復のために、家族の絆のために、仲間との友好のために、あらゆる体験をする機会にすべきである。その結果として、大きくたくましくなり、心豊かになり、明日への糧にしたいものである。今こそ体験の効能にかけるべきである。人としての原点回帰とも言うべきかもしれない。

 
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