【体験型観光が日本を変える 134】環境と田舎への旅 体験教育企画社長 藤澤安良


 アマゾン流域で大規模な火災が発生し、四国全域に匹敵するぐらいの広大な面積が焼失しつつある。対岸の火事ではなく、地球の反対側の火事ではあるが、絶滅危惧種を含む稀少動植物の宝庫でもあり、地球環境や生態系に及ぼす影響は極めて大きいものがある。

 日本では北九州地方を中心に、数年前からよく耳にする「線状降水帯」による大雨や洪水が発生している。多分に地球温暖化との関係が論じられるようになってきた。

 原発の放射性物資もプラスチックゴミも温暖化も、地球上で起こることのほとんどは地球で解決しなければならない。国を代表する政治家が、京都議定書もパリ協定もないがしろにしたり離脱したりするような動きがあることは実に情けない。

 人間は目先のことや直接感じたりする状況には対応するが、未来や先の話は重要視しない傾向がある。地球環境問題は1国の利害や選挙の票のために揺らぐような問題であってはならない。隣国や友好国との間でも、言い分は自分中心が多すぎる。

 全国各地に足を運んでいるが、目先のことしか考えていないのは国内でも同じである。さらには、現状の課題が山積しているにも関わらず、それすら解決のために向かわない現状維持派の首長が多い。

 現状維持はほぼ後退を意味し、未来の絶望につながると思わなければならない。面子、欲得、利権、保身、票など、自分ファーストで考える首長の多いことは残念である。住民、地域、日本、地球のため、そして、その未来のために行動しなければならないのが政治家である。理念と理性を持ってほしい。

 手詰まり感が否めない地方は、活力を呼ぶために何をすべきなのか。答えは一つ。増える訪日外国人も短時間の通過型では経済に跳ね返る額は軽微であり、旅の目的地となり、体験プログラムや宿泊飲食、あるいは物産と後に物流につながる、体験滞在交流型の観光振興に他ならない。

 この分野は、国内旅行においても同様である。リピーターになりにくい名所旧跡、神社仏閣、風景は行きつくされた感があり、旅の募集に苦戦することになる。

 しかし、今まで行ったことがない、泊まったことがない、知られていない田舎に隠れた魅力が山積みになっている。体験交流型の観光資源は、豊かな自然を「ゆっくりと時間」をかけて楽しむこと、農林水産業などの食料生産現場で直にその「作業」に関わり、最も鮮度が良いおいしい「食」をいただくことである。

 高齢化の進む田舎で今学びたいことがある。仕事の仕方にも、食事の作り方にも、伝統工芸にも、高齢者の経験に裏打ちされた「技と匠と知恵」があり、それらを人は学ぶことになる。「人の生き様」まで観光資源となる。

 日本の田舎の価値を訪日外国人は気付きだしている。今こそ、日本人が日本の田舎の良さを理解すべきである。その先に、東京一極集中から交流人口の拡大、定住移住につながる道が見える。旅行会社も机上の商品造成では未来が開けない。地方創生は田舎への旅から始まるのである。

 
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