【体験型観光が日本を変える 146】「桜を見る会」、持ち回りでは 体験教育企画社長 藤澤安良


 北陸新幹線と飯山線、そして長野道と11月下旬の北信濃路を訪ねた。千曲川の氾濫で甚大な被害を受けた地域である。山々はカラマツやナラ、カシ類の黄色の紅葉が見ごろであった。昔に比べて2~3週間遅いイメージである。この美しき景観がこの時期まで見られるのも、その日は季節外れの台風が沖縄付近を通過中であったのも、地球温暖化が進んでいると実感する事象である。

 国会周辺や霞ケ関界隈で季節外れのお花見の話題で持ちきりである。花見は新宿御苑でなくても、可能な所は全国各地にある。都市一極集中を避けるためにも、桜を見る会は各県持ち回りでもいい。警備の問題も選挙応援の遊説ならどこへでも行っている。都市から地方への流れを率先垂範するのも政治の役目である。

 仕事柄、離島や農山漁村など日本の田舎を訪ねているが、高齢者が多くいずれ人口減少に拍車がかかる。生きる糧、働く場所がなければ若者は出て行くしかない。学校は廃校になると子どもはいなくなる。鉄道は廃線になり、路線バスはなくなる。集落からは人がいなくなる。「路線バスの旅」や「充電してくれませんか」などのテレビ番組も成立しない。

 しかし、今やらなければ手遅れになる政策や、今なら成立する旅がある。そこには日本の古き良き原風景、食文化、1次産業、伝統工芸、祭りや行事など魅力がいっぱいである。それらを次代に保全保護し伝えることを真剣に始める時である。今なら伝える人がいるが、20年先はこのままでは危うい。多くの文化が絶滅危惧種である。

 インバウンドでも日本の田舎へという志向は高まっている。政治も旅行業界も田舎への流れをつくるのは急務である。既存の観光地巡りはもう飽きられている。

 過日、南信州観光公社でメディア系の募集企画を受けてコーディネートしたが、参加したお客さまから「ツアーらしくないツアーでよかった」「今まで多くのツアーに参加したが、一番よかった」などと感想が語られた。

 地産地消でなく、出来合いの総菜ばかりで、日本なのに西洋かぶれしたホテルの食事は飽きられている。田舎の食には生産現場と鮮度と食文化がある。細やかな気遣いと豊かな人情がある。生きる力を育む実践現場がある。都市では学べない多くの学びがある。それらに気づいて旅をつくる旅行会社が日本の田舎の活力を生むことになる。それが社会に貢献する企業であり、SDGsの理念である。

 企業の会議や研修も利便性だけの都市ではなく、実が上がり学び多き田舎へ行くべきである。

 社会は、別れたがっている女性を殺す男もいる。いくらもつれても殺すことはない。はびこる覚せい剤や麻薬の類。車を運転する者が簡単に切れての危険運転は命にかかわる。親が子に夫が妻に暴力はいけない。身内に優しく都合の悪いことは隠す政治。そんな人として当たり前のことができず民や命を軽んじる殺伐とした国に、学校も、企業も家族も、社会全体に人間教育が必要である。田舎の教育力を活用すべき時である。

 
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