新型コロナウイルスの感染は東京都で300人、大阪府でも100人に迫る勢いで拡大している。そんな中、今週から「Go Toトラベルキャンペーン」が、東京都民と東京を目的とする旅行を対象外として始まった。拙速すぎるという議論が多い中でのスタートとなった。
その背景には、観光業にとっては数カ月にわたる休業や開店休業状態で、今までの持続化給付金や休業補償では経営は立ち行かず、倒産や自殺者が出るなどということになってはならないという判断が働いていると思われる。
しかし、東京は日本の人口の1割を超え、旅行マーケットとしては2割近くに上ると類推できる。その巨大マーケットが除外されるとなると観光地には大きなダメージとなる。感染者には来てほしくないが、お客は来てほしいと、ジレンマが続くことになる。不安と行きたいの狭間で右往左往していて、見切り発車のイメージがぬぐい去れない。
17日、加藤勝信厚生労働相は、無症状の人でも唾液によるPCR検査や抗原検査を認めると発表した。抗原検査は30分で検査結果が判明するとして、「検査能力の体制拡充に資する」とも述べた。
ドイツでは1日100万人が、いつでも、どこでも、誰でもPCR検査を受けられるという。東京の検査件数は1日4千人程度、桁違いである。日本での抗原検査キットはすでに生産が進んでおり、一刻も早い低価格での普及活用が求められる。
旅行者も観光事業者も検査をして陰性である人が関わるシステムにすれば、住居が東京であっても、行き先がどこであってもひとまずの安心が始まる。その安心安全のためには、検査代を旅行費用や受け入れ観光業者の原価に算入し、価格に転嫁しても良いし、国家での負担をして、経済を活発に回した方が税収に跳ね返るはずである。
コロナ禍の中、コロナ対策ガイドライン策定やウイズコロナ、あるいはアフターコロナを見据えた準備が必要な時であり、全国各地にうかがうこともある。地方自治体の観光関係者は、今夏のイベントや祭りが中止となり、秋から冬も見通せない状況下である。
Go Toトラベルキャンペーンでも宿泊以外の観光、体験、飲食物産、2次交通などに使用できるクーポンが9月以降に加わってくる。安穏としている場合ではない。旅行会社のツアーに対応したり、宿泊事業者ともコラボし、地域総合産業として観光産業を発展させる基盤づくりの機会である。
コロナ後の世界を見据えた観光戦略も重要課題である。さらには、インストラクター・ガイドの養成や宿泊業や飲食店の地産地消化を徹底する仕組みの構築に動くべきである。また、業種別コロナ安全対策ガイドラインの策定とその現場での実践研修は有効である。対応ができている組織とできていない組織を混在させてはならない。
こういう国難はすなわち地域難でもある。今こそ地域一丸となって、解決に向け取り組まなければ後に大きな差になる。自治体職員は当然ながら、首長のマネジメント能力が問われることになる。