【体験型観光が日本を変える 187】デジタルに振り回されるな 体験体験教育企画社長 藤澤安良


 新型コロナウイルス感染者数世界一の800万人を超えている米国大統領選挙が迫っている。郵便投票や期日前投票が行われているが、不正だの、無効だの、おおよそ先進国の体をなしていない信じがたい選挙の様相である。

 ここに来て、日本での新型コロナウイルスの感染者数は全国で数百人程度で推移している。それに比べて、残念なことにヨーロッパでは1日に1万~3万人を超える国が増えている。オリンピック開催やインバウンド観光の復活に向けて心配がつきない。

 新政権の目玉とも言うべき政策にデジタル庁の設立を目指すとしている。政府は確定申告も、持続化給付金申請も、国勢調査もネットでの回答を推奨している。さらには、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に資するとして、新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)を開発したが、そのダウンロード者数は人口の6割を目指しているが1500万人を超えた程度である。

 また、キャッシュレスを優遇するなど、多くの場面でデジタル化を目指しているが、口座からの不正引き出しが後を絶たず、持続化給付金の不正受給詐欺で何人もの逮捕者が出てきている。

 やっと始まった「Go Toトラベル」キャンペーンの地域共通クーポンも紙と電子クーポンの2種類があるのだが、電子しか受け取れない旅行会社もあり、スマホで受け取ったとしても、クーポン自体、使える店が少ない上に、電子クーポンに対応するお店はさらに少ない。

 電子決済方法があまたあるコンビニでも紙クーポンしか使えず、有名な観光地のターミナル駅のいくつかの売店を当たったのだが、期限が決まっており、次回にというわけにはいかず、せっかくの旅がクーポン加盟店を探す旅になってしまった。

 国費投入の国家事業なのに、いろいろな場面で一貫性に欠けるちぐはぐな制度設計や現場対応力に、デジタルに振り回され人間力の無さが露呈したことになる。

 地方へ出掛ける機会が多い中、過日は、県庁所在地の都市から高速道路や特急で30分程度で到着する地方の町へ、各駅停車で20駅も停まって1時間半をかけてたどり着いた。人が密集する都市やコロナ禍とは全く別世界の心安らぐ田舎の風景が展開している。

 その車窓からは、稲の刈り取りが真っただ中の田んぼなど美しい農業の営みがある。しかし、残念ながら耕作放棄地も、ほとんど間伐ができていない人工林も目に付く。里山の保全もできておらず、民家にほど近い所にイノシシのワナが置かれるなど、獣害も深刻な様子がうかがい知れる。

 石川県では町中に熊の出没が相次いでいる。熊の餌となるブナの実が大凶作で、全国的に里への出没は広がっている。自然と人間の営みのバランスが崩れている。多くの課題を抱える地方は、コロナ禍で廃業した商店や宿泊施設も多い。しかし、コロナ後の自然や田舎へ志向がさらに高まることを見据えて、体験プログラムや宿泊施設や飲食施設を再構築し、新たなスタートを切るために動きだしてほしい。

 
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