【体験型観光が日本を変える 194】コロナ禍の旅で思うこと 体験体験教育企画社長 藤澤安良


 新型コロナウイルスによる感染者が増え続ける中にあって、英国でワクチンの投与が開始された。副反応がなく普及し、日本での早い時期の接種を期待したい。

 コロナ禍ではあるが、仕事柄全国各地に伺っている。Go Toを使わずに世界遺産に認定されている著名観光地を訪ねた。さすがに列車やバスの乗客は少なく、郷土料理の昼食を食べようとしても、Go Toの地域共通クーポン加盟の青いポスターが張っているにも関わらず、そのほとんどが閉まっており、矛盾とむなしさが残る光景である。

 やっと見つけた食事店はカレーがお勧めだと言われた。隣の寺院と仏教伝来の地インドとのカレー関係をアピールする物は何もなく、店が薦める割には味は普通だし、横柄な店員の態度と合わせ技一本で駄目となり、私としては次には入らない店となる。

 これは単に1軒の店の問題ではない。世界遺産の看板に傷をつけることになる。Go Toの恩恵を受けて喜んでいる店でも、そこしかなくて入った店も、商品(内容)とコスパ(値頃感)と接客であり、Go Toの期間が過ぎればはっきりと明暗を分けることになる。宿泊施設も同様である。

 NHK大河ドラマの現象に似ており、集客の動機は旅館・ホテルや飲食店が立派だからお客が増えているのではなく、ほぼテレビの影響である。いずれも、そのきっかけは大きな広告宣伝費を使ったわけでもなく他力によるものであり、有難いものである。

 それ故に、もうけに走ることなく、リピーターやファンづくりにつながるように、前述の商品とコスパと接客の向上を目指さなければGo Toにより目先は忙しいが、コロナ後や未来が危うい。

 今年のマイナス分を取り戻し、一段と飛躍するべきコロナ後を見据えて、何をすべきか、観光産業やサービス業の原点に返ることが大切である。地域色・郷土色は旅の原点である。つまりは、地産地消の徹底こそが求められているにも関わらず、多くの宿が、輸入食材や業務用の出来合いの総菜を使い続けている。

 料理人の怠慢なのか、経営者が料理原価を抑えすぎているのか、いずれにしても、ポリシーと努力が足りない宿である。それが飲食店なら観光客には向かない施設である。宿泊も飲食もその地を訪ねる目的の一番手にはなりにくい。世界遺産や著名観光地の神社仏閣、名所旧跡などその地を訪れる目的提案が不可欠である。

 見るだけの観光地はリピーターになりにくく、全国には過去には栄光の地であったが、今は閑古鳥のバードウォッチングができるところも多い。五感体感的な感動が得られ、何度も訪れる目的となる体験プログラムを整備し、宿泊施設とのコラボが生き残りのために不可欠な条件となる。

 しかし、日本ではそれに気づき行動するところがあまりにも少ない。さらに、体験プログラムやガイドツアーはインストラクターの存在が条件となる。明るい未来をつかみ取るためにリピーターやファンが増え続ける人材育成も同時に進行すべき時である。

 
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