【体験型観光が日本を変える 80】平和と地方の活性化へ 藤澤安良


 6月23日は「慰霊の日」で、沖縄は73年目の暑い夏を迎えた。先の戦争では一般住民を巻き込んだ最後の地上戦の地となった。地上戦で逃げ込んで多く死者を出した洞窟(壕)の中を地元の若者が荒らしてしまう事件があった。その場所がどのような場所であるのか、語り継がれているだろうと思われたが、そうでもなかったようだ。

 5月に糸満市南部戦跡の24万1525人もの戦没者の氏名が刻まれた平和の礎を訪ねて冥福を祈った。その後に摩文仁ケ丘を訪ねたが、各県の慰霊碑や黎明の塔を訪れる人はほとんどないないさみしい風景であった。残念ながら隣接する平和資料館やひめゆり平和祈念資料館の入場者数も減少傾向にある。多くの犠牲者の上に平和があることを忘れてはならない。

 そんな暑い夏の夜、ワールドカップサッカーで日本は、予選リーグ最終戦で負けたが、セネガルと勝ち点と得失点差まで同じで、フェアプレイポイント差で上回った。最終戦の最後の10分はボール回しに終始し、その監督の采配に世界の評価は分かれているが、アンフェアプレイのようにも見えた。サッカーは予想外の展開や波乱が起こり、何があるか分からないが、個人の技量はもちろんチームプレイが大きく左右することは間違いない。今後の活躍を期待したい。

 パブリックビューイングや飲食店で試合中継を大人数で観戦したり、みんなで応援したり、渋谷の交差点で夜遅くまで喜んだりと、一つになれる日本であることも分かったが、何かのはけ口ともなっている。夜ふかしと熱気続く日本に平和を感じる一瞬でもある。

 一方で、日本を守るべき元自衛官の人間が、市民の安全を守る警察官を滅多刺しにして殺害の上、拳銃までも奪って警備員を射殺するという残忍で考えられない事件が起こった。直接利害がない人が命を落とす事件があまりにも多いと感じているのは私だけではない。少しずつ人間や社会のシステムの歯車が狂いだしているのではないかと思わずにはいられない。

 働き方改革法案が可決された。過労死がなくなるよう期待したい。若者の非正規雇用も多く、賃金も安くて結婚して子育てできる状況にならない。若者が生きる夢と希望を持ち、それに立ち向かう強い意志と行動が求められている。

 キリスト教の迫害の歴史物語「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の世界遺産登録が6月30日に正式決定した。喜ばしいニュースである。来年3月にはその五島市で全国ほんもの体験フォーラムが開催される。キリスト教会やその周辺集落が世界遺産ではあるが、海の美しさでは沖縄にも劣らない高浜海岸、断崖絶壁に立つ大瀬崎灯台は見逃せない。五島列島は東京から千キロを超え、済州島まで約175キロ、上海までは約600キロであり、なかなか行けない国境離島での開催であり、多くの人の参加を期待したい。そして、若者の未来を拓き、平和と地方の活性化につながり、参加者の心高まる祭典にしたいものである。

 
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