【体験型観光が日本を変える13】地方創生の年に 藤澤安良


 陽光うららかな新春を迎えた。年末には、糸魚川市で144軒が火災に遭うという大惨事かあり、寒風とに雪が舞う中、住む場所を失った人々の心痛は察するに余りあるものがある。これほどの大火となれば、被害は大地震と変わりがないが、死者が1人も出なかったことは不幸中の幸いと言うべきであろう。自然災害ではないゆえに、出火は人の力で防げる。安全確認を怠らないことを教訓にしなければならない。

 米国をはじめ諸外国で行政のトップが交代、もしくは交代する予定となっており、その影響を受ける日本も激動の年になる予感がしている。東京も3年数カ月後のオリンピックを控えて準備を急がなくてはならない年となる。国立競技場とエンブレムのやり直し、競技会場の再検討などスタートでつまずいたが、中間疾走とフィニッシュをうまく決めて成功に導かなければならない。

 2016年の訪日外国人数は2400万人に迫る勢いである。首都圏、関西圏を中心に宿泊施設がひっ迫しており、地方に分散させる政策が重要になる。地方創生の掛け声とともに予算を準備してもうまくいかない現状の中で、金の切れ目が縁の切れ目、一過性にならぬよう補助金や交付金で未来に継続していけるシステム作りが不可欠である。

 年始のカレンダーの配列からも、1月3日に帰省が集中し、私も大混雑の新幹線で田舎から帰京した。4日から仕事だという働き盛りの年齢の人が大半であった。家族や故郷を思い、そして仕事を思い、満員電車や大渋滞の中を移動する。けなげで勤勉な日本国民の素晴らしさに触れてとてもうれしく思った。

 ふるさと納税の制度があるが、お盆と正月以外にも故郷へ帰り、家族の絆を深める休暇を付与する「ふるさと休暇」制度が必要だと考える。お盆や正月に利用して滞在日数を伸ばせばラッシュも緩和できる。さらには、地方での消費額が向上する。その消費額をさらに増加させるために「ふるさと宿泊割引制度」に官民一体で取り組むことにより、モチベーションアップにつなげたいものである。

 また、例えば、政令指定都市以外の地方での飲食・宿泊代は確定申告で所得控除の対象とするなど、地方での消費を活発化させることが必要になる。ふるさと納税の物産カタログが整備され、お金で物を取り寄せるのみでは物の魅力にとどまる。人を動かして、人、自然、食、生き様などの魅力を伝え、ファンになり、返礼がなくても応援したくなり、リピーターになり、終のすみかとなる。そのシステム作りにこそ財源が使われなければならない。それが日本人にも外国人にもニーズが高まる、農山漁村での体験交流であり、その地を訪れる魅力、目的となる。「物」だけでなく、体験交流、観光、宿泊、飲食など「事」のカタログが不可欠である。地方に来て、どう感じ何を思い、どのように心を高めてほしいのか、「心」のカタログを考える時代となった。実効性のある地方創生が動き出す年にしたいものだ。

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