昨年の訪日外国人は2403万9千人との発表があった。その消費額が4兆円にも及ぶという。中でも外国人の日本の評価の高い点は「食」である。和食が世界無形文化遺産になったが、刺身、寿司、すき焼きなどが人気の上位に来ている。四方を海に囲まれ、流通と冷蔵冷凍技術の発達から、日本中で生魚を食べられる日本の食文化は、その文化が無い国にとっては、渡航目的の“鉄板ネタ”である。さらに上位の共通点は醤油である。最近では味噌までも脚光を浴び始めている。
生鮮食料品を取り扱い、食事が可能な築地市場近辺も外国人でにぎわっている。その一方で、昨年から続く豊洲市場移転問題では、環境基準値を大幅に超える79倍ものベンゼンが検出された。近隣国の不安な食品加工の実態が明るみになってきた中で、日本の首都東京の食の台所に不安があってはならない。難しい状況になっているが、適切な対応を急いでほしいものである。
隣国のPM2・5も、視界不良の映像が流れる度に住むのも大変そうだと思えてしまう深刻な状態である。旅行に行きたいとも思えない。年始にPM2・5の話は聞かない香港へ行った。初めて香港に渡航したのは42年前のことであり、近年ではディズニーランドができて以来の渡航である。交通は便利になり、高層ビルも増え、洗濯物が窓の外に干してあるアパートは少なくなった。今や珍しいとそんなアパートの一角が観光地になっている。
空港が郊外に移り、光の点滅や色彩も豊かになり、夜景の美しさは増している。しかし残念なことに、大河の対岸のような距離にある九龍半島と香港島の海峡は、今の日本では懐かしいどぶ川の臭いがする。朝夕にジョギングする人が多い中で歩いてみたが、慣れれば大丈夫とはとても思えない悪臭であった。
日本でも、長崎、四国、瀬戸内を訪れた人が、サーファーや海水浴客でにぎわう湘南の海より、とても海がきれいだと感動している。山や里に雨が降り、川を流れて海に出る。国土を通ってきた海の水は正直である。ポイ捨てされた煙草の吸い殻は雨水と一緒に川に流れる。工場廃水、家畜の屎尿処理、生活雑排水などの水処理は進んでいるが、煙草もゴミも流さないように心掛けることも大切である。
環境悪化はすぐさま改善できず、元に戻るには長い年月を要するが、絶滅した生物は戻らない。美しい風景は、見た目だけではなく、美しい環境でなくてはならない。そこでとれる食料、食材が安心であり、おいしいと感じる要素にもなる。
外国人が、日本はゴミが散乱せず美しいと言ってくれている。世界で一番きれいな空港の羽田空港をはじめ空港や駅、あるいはホテル、著名観光地はトイレを含めて掃除の担当者がいて、それなりに維持するための努力をしている。
観光関連施設、集落や街並みの環境が心配である。美しい日本のイメージを損なわない準備が必要だ。観光は環境である。