【体験型観光が日本を変える14】農山漁村の活性化 藤澤安良


 中国の春節が始まり、日本への観光客も増加が見込まれる。爆買いなどと言われた購買力は低下したが、PM2・5に悩む中国にとって、日本の美しい風景や美しい空気は魅力となっている。また、アニメ映画のロケ地などの聖地巡礼、スキーなどのアウトドアスポーツ、着物の試着や伝統工芸などの物づくりと多岐にわたって体験型観光が人気になってきている。

 また、首都圏から富士山の裾野を通り、京都や大阪に団体バスで行くゴールデンルートの旅に加えて、個人旅行の拡大で列車の旅も増加している。いよいよ、日本の田舎が脚光を浴びる時が来た。せっかく田舎に足を運んでくれるのに、その準備ができていない。

 食事のメニューと内容の解説が多言語表記であることが望ましい。さらにはトイレの使用方法に始まり、文化や生活習慣はもちろん、モラルやルールについても、外国語表記で伝える必要がある。「郷に入りては郷に従え」の意識醸成をしながら日本らしさや日本の良さを体感してほしい。

 体験プログラムにおいても、安全対策、危機管理、コンプライアンスなど、事前の重要事項の説明に多言語表記をするなどの徹底が不可欠である。旅館・ホテル、ペンション、民宿についても宿泊約款の多言語版が提示できることでトラブルが防げることも多い。

 修学旅行や校外学習では、教育効果が高いとして増え続けているホームステイ型の民泊も、外国人の教育旅行での利用が増加の一途をたどっている。いわゆる民泊と称され、問題が山積の都市のアパートやマンションの空き部屋貸しとはまったく違うので、混同されないことを願っている。

 米国の大統領がTPP(環太平洋連携協定)に将来にわたって加盟しないなどと言い、日本でも大きな影響を受けることは必至である。そのTPPと農協改革が進まない中、農山漁村の活性化や所得向上は、都市農山漁村交流に収れんされ、上げ膳据え膳の旅館・ホテル型ではなく、共同調理でその田舎料理をマスターできる体験交流の民泊に求められることになる。

 全国で受け入れ家庭は1万軒を超え、地方創生の切り札となりつつある。農林水産省も2017年度予算案に、目指すべき「農泊地域」の創出に向けた事業費を計上した。農山漁村の高齢化と後継者不足、3年後に迫った東京オリンピック・パラリンピック、観光立国、1億総活躍社会など、すべてにつながっているこの事業の推進には大きな期待を持っている。

 しかし、子ども農山漁村交流プロジェクトで経験した轍を踏まないことが重要である。「お金があるからもらおう」ではその仕組みはできない。受け地の数が多ければいいというものではない。理念を持ち、地域振興の御旗をしっかり掲げ、個人や少数の欲得で動いてはならない。組織づくりはそれらを踏まえた人づくりであり、担い手の農家も、体験プログラムのインストラクターも教育、研修の機会が不可欠となる。それは私が今まで関わった成功地域の条件でもある。

170204h

 
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