【体験型観光が日本を変える257】知床観光船事故の風評被害を懸念 藤澤安良


 3年ぶりにコロナ禍での行動制限が解除された大型連休は、後半になってやや感染者数が増加傾向にある中で終わった。2日間休みを取れば最大10連休ともなる。家族連れを中心に、コロナ禍でもあり、日帰りや1泊など近場が多く、テーマパークや遊園地など観光各地も多くの人出となった。

 アウトレットモールやフリーマーケット、あるいは大型量販店などで爆買いする人も多く、それらは自粛バネの反動であろう。イベントやスポーツ観戦も有観客となった。

 旅行は、人との接触を避けようというのか、マイカーやレンタカー利用が多くなった。都市圏の高速道路の渋滞も、航空機や鉄道の混雑も久しぶりのことである。しかし、残念ながら、連休前に世界自然遺産で国立公園でもある知床半島で、その半島を巡る観光船が遭難するという、観光関係者に衝撃が走る事故が起こった。26人もの乗客乗員が死亡や行方不明となった。

 捜査が進むにつれて、国の検査体制も、船舶会社の運営管理体制も多くの点で不備が指摘され、あまりにもずさんであった。私も約35年前に数百人が乗れる大型船で知床半島巡りを経験した。出航時は穏やかであった海も、滝が見える場所では大きく揺れ、年配のご婦人が何人も帰りたいと叫んでいた。それほど知床の海は特別な環境にある。

 全国には静水に近い湖沼もあれば、急流の川もあり、比較的穏やかな瀬戸内海や東京湾と、知床の海は全く条件が異なる。当然、運航場所に適合した、設備や運航条件など規制基準も全て違っていてしかるべきであり、抜本的な安全対策が求められる。

 運航場所により従って、全ての船舶に風評被害が及びかねない状況が現れている。事故の3日後に川の遊船事業者の事務所を訪ねたが、キャンセルの電話が鳴り続けていた。穏やかな川の流れを指さしながら「またですよ。知床とは全く違うのに」と風評被害に頭を抱えていた。

 一つの事故でその救難救出作業には莫大な費用が掛かる。その何倍も経済的な損失が風評により及ぶことになる。運輸機関はもとより、社会は自己利益よりも、経済よりも、人命を守る安全対策が最優先されなければならない。そして人命を軽んじているのが、今なお続くロシアのウクライナ侵攻である。

 言語、経済圏、宗教、旧連邦等の共通点から兄弟などと言ったかと思えば、子どもや婦女子など非戦闘要員にまで及ぶ拉致、監禁、拷問、暴行、虐殺など、この世の悪行の限りを尽くす、常軌を逸した行動は、つじつまの合いようがない。

 そんな中、コロナの規制は欧米で緩和されつつあり、空港検疫での検査はあるが、双方の隔離期間がなくなったハワイへは多くの人が訪れた。しかし、コロナ検査料金に加えて、日本人にとって大幅な円安による物価高は海外旅行のハードルを高くしている。

 逆に、訪日外国人にとっては、日本は観光の魅力に加えて金銭的にも大きな魅力となることから、日本の経済を考えれば入国者数の規制緩和や検査時間の短縮に期待がかかる。

 
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