【体験型観光が日本を変える265】今までにない旅行の提供を 藤澤安良


 例年になく大雨も長雨もなく、猛暑ばかりが続く中での梅雨明け宣言となった。東京では新型コロナの感染者数は増え続けているが、熱中症での救急搬送ばかりが注目されている。感染者は一定数いる中で、新幹線も航空機も便数も乗客数が増えてきており、観光重要の回復の兆しが見えている。

 さらには、夏休みを前にして全国旅行支援の制度が始まると、観光業界の期待はさらに高まることになる。同時に、このところのコロナの感染者増加の要因について分析し、報道し、注意喚起すべき時でもある。人間の弱さでもある「喉元過ぎれば…」となってしまって、第7波の襲来は避けたいものである。

 旅行需要は家族、カップルなど個人客を中心に拡大傾向にあるが、貸し切りバス利用の団体旅行は動きが鈍い。バブル期から従来までは実施してきた企業組織団体の親睦や慰安旅行は大きく目的転換する時である。

 わが国は20年も実質給料が上がらず、一部を除いて決して企業力が強いとは言えない中、会社の経営や働き手はどうあるべきか考える時である。社員教育は永年にわたっておろそかになったり、効果の薄い会議室や研修室で行われたり、後回しにしてきた付けが今にきている。

 これらの課題に特化した、人材育成、CSR等社会貢献、SDGs実践プログラムを中心にした体験交流型の社員教育旅行が必要な時代である。旅行業界の企業組織団体担当部署はこの新しい旅行形態を提案しなければ役割がないことになる。

 学校の教育旅行もいつでも誰でも行ける、物見遊山の観光旅行や米国発の「DとかU」等のテーマパークで遊ぶだけの旅行であれば、同じような素材で数社での価格競争になる。

 低収益のたたき合いゲームに参加し、1社しか採用されず敗北の業者は徒労に終わる。このルーティーンから脱却しなければ、いつまでも魅力ある市場にも、教育効果の高い商品にもならない。

 新学習指導要領「主体的・対話的で深い学び」や「探究学習」あるいはSDGsプログラム等に加えて、生徒の「考える」「議論を展開する」「コミュニケーションを活発に行う」「社会とのかかわりを高める」等のテーマが求められている。

 例えば、SDGsを取っても学校の出方待ちでは、定着する頃にはゴール予定の2030年を超えてしまいかねない。積極的に企画提案し、説得し納得させ、新しい教育旅行のスタイルを構築しその時代への対応を急がねばならない。

 百年1日がごとく変われないでいる古い体質の旅行業界の未来は危うい。夢や希望を持って入った業界で、コロナ禍とはいえ旅行商品を売るという本業以外の仕事であったり、若者の失望感が漂っている。希望退職や嫌気諦め退職も増え続けている。

 経営者や管理職は会議ばかりではなく、具体的な戦略や行動が未来に続く扉の鍵となる。コロナ禍からコロナ後に向かう時、現状の打破は旅行形態の変革に他ならない。それは、同時に旅行業界の大きな試練でもあるがチャンスでもある。

 
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