【体験型観光が日本を変える272】人間力を身に付けよう 藤澤安良


 猛暑の8月が過ぎ、朝夕は涼しく、時折吹く風も心地よく感じる季節となり、新学期を迎えた。コロナ禍での3回目の夏休みの今年は、帰省も旅行も自粛ムードから行動モードになった。お盆過ぎには、全国各地の新型コロナの感染者数が相次いで史上最高を更新していた。

 しかし、8月下旬から感染者数はやや減少気味に転じており、ピークアウトし収束に向かってほしいものである。政府(厚労省)も人と人の間隔が離れているなら、会話をしないならマスクは外していいという内容のメッセージをテレビでも発している。

 さらには、感染者の全数把握の見直しを発表した。また、無症状感染者は買い物程度の外出を可能としたり、抗原検査キットをネット販売するなど、新型コロナとの付き合い方が明らかに、NOからWITHへと変わってきている。

 私も、4回目のワクチン接種は完了し、お盆過ぎの全国の感染者がピークになる中、直前に抗原検査キットにより陰性を確認して、SDGsプログラムの推進手法や教育民泊の再開に向けた課題での講演セミナーで、全国各地のどちらかといえば田舎といわれている地域にうかがった。

 もちろん中止になる場合もあるが、まん延状況下で、参加してくれることが、とてもありがたく、前に向いて進もうとしていることを感じられる充実した時間である。

 私は地方の3セクの宿泊業のコンサルティングをしているが、コロナ禍でも、7月中旬~8月はほぼ満館に近いお客にお泊まりいただいた。そして、クラスターはもちろん感染者も出ていない。

 つまりは、コロナ禍だからといって、萎縮せず逃げず、やらない、行動しない方向の選択はせず、万全な感染対策は当然だが、いろいろな制限制約の中で知恵と工夫で経済を回して生活の糧を得る方向に動いてほしい。何もやらない選択肢からは経済も精神的な充実も得られない。

 コロナ禍なのか、それとは関係ないのか定かではないが、行きずりの母子を殺害しようとした少女がいたかと思えば、家族間での殺人も後を絶たない。また、交際している男女間や、片思いやストーカーなどの男女間での殺人事件のほとんどは女性が被害者となっている。

 人の人生を奪うことは自らの人生をも奪うことだ。命の尊厳意識が希薄である。男が精神的に成長していないのではと感じる。人との違いを認め、人とコミュニケーションし、人とうまくやっていくのかのノウハウが足りていない。人間力が足りないとも思える。

 ずっとスマホをいじり、ゲームばかりして、買い物も人を介さずネットに頼っている。これだけ人とすれ違わずに正面から接する機会が少なくなれば、人間関係構築能力も育まれない。仕事でも外部の人と直接会って営業したり交渉するのも苦手意識がある。

 社会人も児童生徒学生も人間力を身に付けなければ日本が危うい。机上学問だけでは人間の体をなさない。体験交流による教育は人間力養成そのものである。つまりは、体験型観光は日本を救う人間教育である。

 
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