【体験型観光が日本を変える280】円安ドル高の功罪 藤澤安良


 円安が進んで対ドルで一時150円を超える場面もあった。米ドルだけではない。主たる通貨に対して全て安く、築地の高級すし屋のランチで6500円を安いと言って喜んで食べている香港からの客。当地では2倍はするとのこと。円安はインバウンド客に対して大きなメリットとなっている。

 都内は急激に外国人の姿が増えたように思える。実質賃金が20年ぐらい上がっていない日本と時給が2倍、3倍の国がざらにある中で、この円安は日本の不動産やいいものをみんな買い占められてしまいそうな勢いと不安を感じずにはいられない。旧統一教会問題で都合よく記憶をなくしている場合ではない。

 また、日本の旅行業界にとって、日本人が海外に行く分の旅費と、インバウンドで取り扱っている金額は桁違いであり、円安は海外旅行へのモチベーションが上がらず、大きな旅行業経営の障害になる。

 頼みの綱の国内旅行も全国旅行支援が始まったかと思えば、10月20日の時点ですでに枠がない等と補助を受け取れなかった。期待が大きかっただけに残念な事態である。

 受け取った観光クーポンを使えるところが、コンビニやドラッグストアやファミリーレストランなどで、観光客が飲食したい地元の店があまりにも少なく、旅行支援ではなく日常生活支援となっている。

 新型コロナも下げ止まり、じわじわと感染者数が増えている。寒くなって、インフルエンザとの同時流行が懸念されるが、コロナ禍でコロナとの共存をしながら社会経済を回していくには、いろいろな面で、コロナ禍の3年間の経験を生かす必要がある。

 電気・ガスなどのエネルギー料金の高騰を政府補助でするより、所得向上で補わなければ、政府の給付金の切れ目で貧困が深まることになる。モグラたたきゲームのような政策ではなく、抜本的な政治経済改革が必要になる。

 隣国の韓国で梨泰院(イテウォン)ハロウィーンイベントのさなかに人雪崩が起き、20代中心に日本人女性2人を含む154人が死亡するという大惨事が起こった。日本でも、花火見物の歩道橋で同じような事故が起こっている。他人事ではない。

 米国のイベントでなぜそのように騒ぐのか、くり抜いたかぼちゃの中身は食べているのか、仮装が楽しいのか、多くの人に見せたいのか、全く興味がわかない年寄りの疑問はつのるが、群衆心理や自己承認欲求等、人の心が絡まりあってみんなが集まることになる。本質は何かを見極めなければいけない。

 一方で、人口減少が著しい過疎化が進む田舎では、イベントや祭りの担い手ですら確保できないという事態が起こっている。田舎には全国旅行支援もインバウンド拡大も何もしなければ何もなかったかのように終わってしまう。

 多くの格差なのか、差異なのか、全国各地の地方に行っているが、自然、食、歴史、文化など、いずれも魅力があふれている。これからの観光地は、今までの観光地でないことが条件になる。地方は、自信と誇りを持って行動に移すべき時である。

 
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