【体験型観光が日本を変える285】「天竜舟下り」の復活に向け 藤澤安良


日本は、サッカーワールドカップ(W杯)カタール大会の予選リーグで強豪スペインに勝利し、難関の決勝トーナメントへグループ1位通過を果たした。現地カタールはもちろん、日本国内でも歓喜の渦に巻き込まれた。

 日本時間の早朝4時からの試合であるにもかかわらず、前半戦だけで16.9%と視聴率も高く、勝利後の朝はテレビ各局サッカー一色となった。その関心の高さをうかがい知ることができる。

 ロシアのウクライナ侵略、新型コロナ第8波、物価高、円安など、何かと暗いニュースが多い中で、久しぶりの明るい話題となった。決勝リーグでのクロアチアでの勝利を期待したい。

 また、コロナ禍にあっても全国旅行支援の効果もあり、人流が活発になりつつある。平日の品川駅新幹線切符売場でも長蛇の列ができていた。新幹線の乗車人数も自由席がほぼ満席になるぐらい増えている。3年ぶりの光景である。

 厚生労働省も新型コロナの感染症の分類を、インフルエンザ並みの扱いになる5類に引き下げる検討に入った。合わせて、全国旅行支援も延長され、正月休み明けからも再開が予定されている。海外旅行はまだまだだが、国内旅行は確実に復活の兆しが見えてきた。

 そんな中、長野県飯田市の天竜川での「天竜舟下り」がコロナ禍での集客が伸びないこともあり、昨年12月から休止していた。しかし、105年間にわたって続いていた木造の和舟で川を下るという文化を絶やすのは忍びないと復活を望む地域の声も多く、新会社「南信州リゾート(株)」を南信州観光公社の子会社として、地域の優良企業、観光関連施設、広域地域の市町村等からの出資を募り設立した。

 リニアの恩恵を一番期待できる途中駅は南信州である。また、広域地域のどの市町村にもその恩恵を獲得できる可能性は大きい。南信州は世界に知られていないが、二つのアルプスに囲まれ、天竜川とその支流、日本の田舎の原風景、多種多様な果物や野菜の生産が可能な農業と体験交流型の観光資源素材としてのポテンシャルが高い。

 これを生かして、トレッキング・アウトドアアクティビティ(舟下り、ラフティング、パックラフト)、農林業体験・民泊など、26年にわたって修学旅行生の誘致をしているが、一般客にもインバウンドにも可能性が大きい。

 リニア時代に世界のリゾートにするために、南信州リゾートも、和舟のみならず、ラフティングやカヌーなどのアウトドアアクティビティ、天竜峡のガイドツアーなど、幅広い分野での体験プログラムコンテンツを充実させ、コロナ後から、インバウンド拡大やリニア新幹線開業に向けた行動を起こすこととしている。

 リニア開業は1世紀に1回のチャンスであり、南信州地域が一丸となって備えなければならない。また、コロナで痛めつけられた3セクの宿泊施設や温泉施設などが苦戦しているが、それらの地域の拠点施設が負け組では、効果には届かない。南信州広域の課題解決のコンサルティングを担う役割も求められ、その期待に応えなければならない。

 
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