サッカーのワールドカップ(W杯)での日本代表チームは優勝経験国の強豪ドイツやスペインを撃破し、決勝リーグでも準優勝国のクロアチア相手に互角に戦うなど、ベスト16にはとどまったものの、国民の期待に応える大活躍に「感動した」「元気をもらった」などと日本列島に賞賛の声が渦巻いた。
何かと分断や価値観の違いは、しばしば争いを呼び起こすきっかけになるが、スポーツの力は大きく、国や地域がひとつになれる。つまりは平和の証となるものである。
師走になり、各地から雪の便りが聞こえる中、人の動きはコロナ以前に徐々に戻る動きを見せているが、爆発的な感染拡大とはならずに正月を迎えられそうな気配である。
体験型観光も基本理念である人との交流が不可欠であることから、3年にわたって本格的な受け入れ態勢が整わなかったが、修学旅行がほぼ予定通り実施されていることもあり、再開の動きが活発になってきた。中でも、体験交流と共同調理が条件の教育民泊は受け入れ地域や家庭の崇高な理念と理解がなければできない事業である。
11月下旬には、コロナ前の3年間にわたって準備を進めてきた愛媛県南予地区の9市町による教育民泊の受け入れが(一社)八幡浜市ふるさと観光公社コーディネートで実現し、首都圏の7クラスの高校など2校が訪れた。
過日、受け入れ後の地域や家庭の反応や感想を聞き、課題を共有し次回の受け入れに生かすべく、「南予体験交流フォーラム」が開催された。生徒や先生からは次回も訪れたいとの言葉も聞かれるなど評判はとても良く、とりわけ生徒は、都会で食べているメニューはほとんどなく、田舎料理中心であるが、食事がとてもおいしかったと言う。
星空、山、川、みかんの段々畑、蒼(あお)い海など、都会とあまりにも違う自然や暮らしに驚き感動したようである。
「旅行行程のすべての旅館やホテルより、民泊の方が良かった」「時間が足りない。何泊もしたかった」「また来たい」「20歳になったらおじさんとお酒を飲みたい」―などと感想を述べた。また、家庭の人々が優しく親切で心の温かさを感じたとも言う。
つまりは、都市では得られないものがいっぱいあったということである。大自然や食料生産現場である1次産業の大変さと重要性。出来合いの惣菜やデリバリー、外食、冷凍食品が多い食生活とは違う、新鮮な食材でつくる素材の味を生かした素朴な田舎料理のおいしさを舌で体験した。
都市と農山漁村の差異を理解することは、将来の日本を担ってくれるであろう若者にはとても重要な体験となる。さらには、地方にある、過疎、少子高齢化、集落や田舎の存続、1次産業高年齢化、後継者不足など社会的なSDGs課題を理解し共有し、考え、行動変容につなげる教育機会ともなる。
地域の担い手の多くも、生徒から元気をもらった。ありのままの自然や暮らしで感動したり喜んでくれたと、地域に対して自信と誇りを持つ機会となったようである。次の機会を楽しみにしているという。