台風2号が梅雨前線を刺激して発生した線状降水帯は、各地に大雨・洪水をもたらした。続いて、台風3号が発生し、同じような進路をとろうとしている。大きな被害が出なければいいのにと願っている。
洪水の映像は、ウクライナのダムが決壊しドニプロ川が氾濫した映像とダブって見えた。どうやら爆破されたという説に傾きかけている。戦時下とはいえ、大災害を人為的に起こすなんてなんと情けなく愚かなことか。多くの命が奪われないことを願うばかりである。
そんな中、天候の心配はあったが、山形県庄内空港へと飛んだ。松尾芭蕉の句「五月雨を 集めてはやし 最上川」を体感するためである。梅雨時期の日本の河川は増水し、川下り観光にとってとても難しい季節である。
天竜川の和船下り事業に関わっているが、天候は晴れでもその前に降った雨による増水は数日続くことになり、運航できないことがしばしばある。自然相手で水量次第であることから、究極の水商売といえる。
最上川の河岸を鶴岡市から乗船場がある戸沢村古口に向かった。その途中は台風のような車を揺する強風が吹き荒れた。欠航とはならなかったが、残念ながら予定のコースとはならず、強風地点を避けた回遊往復コースとなった。
川の風情とガイドの案内と山形民謡の歌声を楽しんだ。川の舟運の歴史に始まり、芭蕉が乗船したり、世界中に配信されたNHKドラマ「おしん」のロケ地であったり、話題に事欠かない。
冒頭の有名な芭蕉の俳句も英語や中国語にも翻訳され、紹介されている。
テーマソングともいえる最上川舟唄はなんと英・仏・中・韓の外国語にも翻訳され、客の言語に合わせて対応しており、インバウンド客への対応も抜かりない。唄は手拍子や一緒に歌うなど、お客との一体感が生まれ、顧客満足度を上げることになる。都合、民謡4曲を披露してくれた。
案内の日本語バージョンは山形弁が交じり、それだけでも味がある。さらには、最上川の源流から始まり日本海までの長さや、四万十川や木曽川の話題も出てくる。風景や自然、暮らしや民俗食や土産の話など約1時間飽きることなく楽しませてくれた。
川の風情もさることながら、圧倒的にガイドの力量がものをいう観光商品である。自然観察でも、史跡やまち並み散策でも、フィールドが違うだけでガイドの力量次第である。力量をどう推し測るのか、結論は顧客満足度であり、リピーター率であり、口コミ率である。
その要件は何か。お客の思いに寄り添うことである。それは、マニュアル通りではなく、いま、何を求めているのかを考え、その場面に必要な話題を臨機応変に展開することである。つまりは、対人洞察能力ともいえるものである。そんな姿を求めて、そんな風になりたいと思う者が心の目で見ようとすれば見えてくる。
五月雨の奥の細道にて思ったことは、サービス業とは実に奥深きものなのであるということだ。