【体験型観光が日本を変える309】教育の在り方を立て直そう 藤澤安良


 18歳の自衛官候補生が射撃訓練中に教官に向けて発砲し、2人の死者が出た。あってはならない事件とか、前代未聞だとかいわれたが、どんな背景と動機かは捜査の行方を待つとしても、現代の世相からは起こり得る可能性を持っている。

 体育系の部活も昔に比べて極端な縦社会が改善されつつあるが、体育系に限らず先輩後輩の関係などの人間関係を学ぶことになる。そんな関係が煩わしいと思えば、強いられることはない。バーチャルな世界だけれども、殺し合いゲームが多い。いきなり過酷な訓練や縦社会はなじめない人間は少なくない。

 そんな中、若者が加害者となる強盗事件が連日のように報じられている。過日も18歳の若者が現行犯で逮捕され、警官から仲間は誰かと聞かれて、知らないと供述している。いわゆる闇バイトといわれる方法で募集された実行犯が相次いで逮捕されている。

 その背景に何があるのか、社会全体の問題として検証し、対策を講じなければ起こり続けることになる。若者の貧困、バイトなど非正規雇用比率、失業率はいずれも10代から40代までが多い。

 ここにきて、物価高もあり、ようやく大企業を中心に給料を上げる風潮になり出したが、それでも実質賃金の改善とまではいかないレベルである。「失われた30年」ともいわれているが、果たしてこの先の未来に希望が持てるのか、決してその確信を持たせてはくれない。

 学歴があってもスキルがあっても、人間関係構築能力がなければ、組織で役に立たなかったり、キャリアアップならいいが、退職転職を繰り返したり、ニートや引きこもりになったり、社会での隔絶の場に身を置くことになりかねない。学歴やスキルがないものはさらに厳しい社会環境の中にいる。

 どちらにしても、働かずして容易には生きていけないことから、お金が全ての価値観が高まることになる。そこで、使い慣れているというより、スマホなしでは生きられないレベルであり、SNSの普及もあり、スマホをいじる時間に人生の多くの時間が割かれていく。

 指先一つで麻薬や覚せい剤にも闇バイトにもたどり着く。数多ある悪への誘惑に屈せず、自分をしっかり持って、前に向かう姿こそが求められている。現在の学校の教科学習や塾での受験対策では学べない分野である。

 家庭教育でもゲームとスマホの子どもへの自制は難題である。つまりは、子どもから社会人までの社会全体の教育の在り方を、国家的なプロジェクトで立て直さないと間に合わない。

 学校の特別教育活動での修学旅行などで体験交流を推進してきたが、違う地域の違う生き方をしてきた、違う年齢の人との交流は、児童、生徒、学生を精神的に大きくたくましくすることが分かっている。教科学習の時間を削って人間教育機会を増やさなければならない。

 人間力を学べるのは、書物やゲームでもなく、テレビでも物足りない。人との交流しかない。旅の形も、教育旅行も体験交流でしか希望ある未来は開けない。

 
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